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小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
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ポケモン中心二次創作文字ブログです。


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擬人化、と書いたものは擬人化を扱っていますので、苦手な方はご注意くださいませ。




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・展示しているすべての文章などは、無断転載や模写などお断りしております。おやめ下さいませね。
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「それが君の、サイゴの願い?」



ライボルト♀のラトルテ。
図太い性格で、ものをよく散らかす。
他人の話を一切耳に入れようとしない頑固なところには仲間も相当手を焼いている。
エンジュやオミシャ曰く、その性格は出会った当初から変わらないようであり、当時に比べれば今はまだ丸くなったようである。
野生の名残で非常に警戒心が強く、他人を「敵」という認識で捉えている。仲間でも新参者であるハーチェスには未だ警戒が強い。

戦いにおいては勝つことがすべてだと思っており、どのような状況であろうとも負けることを許そうとしない。これは野生時代の名残。
エンジュの側で過ごすうちにいくらか考えは改まったようではあるが、いざ戦闘に立つと血がのぼり、本能的に動いてしまう。どれだけ重いダメージを喰らっても相手に突っ込む無茶を行う他、瀕死である相手に更なる一撃を加えるという過激な行動を取ろうともする。どちらの場合もエンジュや他の仲間が制止にかかるが、今もなお彼女の行動に変化はない。ラトルテに染みついた「戦闘本能」は、いまだ抜ける気配はない。

特性は「せいでんき」であり、触れた相手を自身の意思とは無関係に痺れさせることがある。それもあり、余計に馴れ合いを避ける傾向にある(相手への配慮ではなく、痺れさせた相手の敵意を買うというリスクを避けている)。「ミラクルスキン」を持つオミシャはお構いなくアプローチを続けた結果、ラトルテとまともに口を聞けるようになったという。ちなみにかつて倒れていたラトルテをセンターまで運んだのもオミシャである。エンジュは麻痺して手が出せなかった。
ラトルテの戦闘スタイルは正気を失うほどに過激化するが、中でも危険なのが「自身を避雷針に仕立てる」というもの。相手を押さえつけた後、自身もろとも雷を受けることで、定まりにくい「かみなり」を必中させる。しかしこれは特性「ひらいしん」で行ってこそのものであり、当然彼女自身も大きなダメージを負う。
勝つための手段は選ばない、勝つためならその身朽ち果てても構わない。傷なら癒える。いくらでも作って構わない。それがラトルテの戦い方である。

彼女を戦闘に参加させる際は監視役が必要な事が多いが、最も適任であるのはエンジュ。
ラトルテが比較的聞く耳を持つ相手であるのも一因ではある。しかし何よりも、理性を書いて暴走するラトルテの雷撃を、相手も彼女も傷つけずに止められるのはメガシンカしたエンジュの「ひらいしん」しかないのである。
エンジュが、この方法が最適であるとわかりつつもあまり好んでいない理由は、ラトルテが「ひらいしん」に劣等感を覚えているためである。



【出生】

ラクライ。彼らが生息するのはキンセツを間近に控えた野の道。サイクリングロードの建設により人の手が入らず、多くの野生種が確認できる。
なかでも多いのは電気タイプ。キンセツ・ニューキンセツ間で発生する電磁波が彼らを呼び寄せるためである。雷狼ラクライ・ライボルトもこの周辺を主に確認されている。
ラトルテは、とあるラクライの群れに生まれる。

雷狼落雷は数匹からなる群れに「リーダー」を備え、集団行動を主とする。
縄張りは持つものの、獲物を求めて移動が多く、同じ場所に長くは留まらない。狩猟生活を行い、大型の相手に対しても連携で仕留める利口さを持つ。移動には雷狼同士の衝突を避ける意味もあるが、鉢合った際は戦闘に発展する場合もある。
仲間思いで、リーダーや目上だと認めた相手には忠義が厚いのが特徴である。

ラトルテが育つ場所も、そんな場所であった。
にもかかわらずラトルテは、エンジュが出会った幼い頃には既に独りであり、慕うべき相手はおろか、仲間などいなかった。仲間思いであるとは到底言えない性格で、現に今でも仲間との距離を取ることが多い。

ラトルテの群れは、彼女が幼い頃になくなった。
他集団か、もしくは他の強力な種かわからないが、戦闘に負けて息絶えた。リーダーも、親も。
生き残ったラトルテは、どうするべきかわからないまま、ただ生きた。生きる以外にすべきことがわからなかったのだ。
雷狼としては他集団に入れてもらうという選択もあっただろうが、彼女にはそんな選択肢は思いつかなかった。思いつかないままどうにかがむしゃらにただ独り生き、そのまま一匹狼となった。
一匹狼として生き残った彼女に残されたのは、これから先も生き抜くことであった。



【縁寿と一匹狼】

やがて一匹狼が直面するのは、雷狼の集団との対峙であった。
群れを持たぬラトルテは「はぐれ者」とされ、雷狼からはいじめ甲斐のある格好の獲物であった。利口なラクライの連携に、孤独のラトルテは幾度となく追われては雷撃を食らう。しかし彼女もただ負けるだけではなく、対抗して雷撃を放ち、幾度となく撃退した。
彼女がその地で生きるために必要なのは「勝つこと」ただ一つ。
ラクライが利口であればまた、彼女も利口。経験値を積んだ彼女は仲間なくとも勝ち残る術を備え、雷狼を追い払ってもまた来る別の雷狼を、独りで相手する力を得ていた。

エンジュとオミシャがその道を通ろうとしていた時、林の中でラトルテはボロボロだった。
その日もまた、見慣れた雷狼が群れでラトルテと対峙した。この間と違うのは、ラトルテの雷撃が、ちっとも効いた気配がなかったことだった。
部が悪い。一度退いたラトルテは木々の間を駆ける。ここでは木々が邪魔でやってられたものじゃない。林の外へ、外へと走り、後ろからは追手の足音と遠吠えが迫る。
ポツリと雨が当り、見上げれば雨雲が空を覆っていた。都合いい。
追い付いたラクライの群れに飛びかかり、群れのリーダーに食らい付く。ラトルテから火花が爆ぜて、煌々と瞬いた。大きく吠えた、呼応するように空が鳴いて、ラクライの群れの中、ラトルテに向けて、稲妻が落ちた。
自身を避雷針にしてかみなりを放つのは、彼女が身につけた技だった。敵を確実に狩る、そのための技。

その失敗を悟ったのは、相手の雷撃が身を焼くと共にだった。

一撃必殺の雷、焼け焦げながら勝ちを確信していたラトルテ、よろけた彼女を無情にも地に押さえ付けた無傷のそれは、彼女が食らい付き確実に仕留めたはずの、敵の頭であった。
――彼女の特性は「せいでんき」。対する群れは、ラトルテを狩るため組まれた連携の中にある群れの面子は、「ひらいしん」。電気を引き寄せ、己の特攻を上げる特性。ラトルテの雷撃は、ただただ相手にエサを撒いていただけだったのだ。

ラトルテはただ逃げて、先もおぼつかないまま、草むらで倒れ付した。
瀕死の状態のラトルテを見つけたのは、たまたま通りかかったエンジュだった。虫の息で威嚇するラトルテに、構わず背追い上げるべく触れようとした時、静電気が走る。痺れに堪えるエンジュはそこであとを追っていた群れの小わっぱに出くわした。
「ソイツを寄越せ」
「協調性のない一匹狼だ」
「弱いやつはいらない」
「役にもたたないせいでんき!」
口々に嘲笑う4体のラクライに、エンジュが代わりに刃を向ける。1、2、3と峰を打ち、4体目というその刹那、痺れて膝を付いた。その隙目掛けてラクライの牙が突き立てられんとしたそこで、どろりと爆弾が飛び散った。泥に目潰し、のたうちまわるラクライを、遠くでオミシャが見下していた。遅れて付いてきたオミシャの顔は不機嫌で、手には泥の爆弾が収まっていた。泥を前に使い物にならない雷撃。うちは機嫌が悪いんや。オミシャはまた泥爆弾をお見舞いすると、たちまちラクライは逃げ帰った。

麻痺して動きの覚束ないエンジュに代わり、ラトルテを背負ったのは小柄なオミシャだった。うちは変わった特性やの。静電気なんて怖くあらへん、そう呟くオミシャの話に、特性という負い目を思い返すのはラトルテだった。
「役にもたたないせいでんき」というラクライの言葉。勝負にならない相手の「ひらいしん」。朦朧とする意識の中、膨らむ「ひらいしん」への劣等感を拭ったのは、エンジュの言葉だった。

「役立たずなはずないよ。キミに触れたせいで、自分は最後に立てなかったんだから」

敵しかいなかったラトルテの世界に、彼の存在は異質であり、「リーダー」と認められる者であった。だから彼女は、彼に心酔するのである。


(それだけだと思っていた)




【遠くない未来の話】

メガシンカした際、煮える血に暴走した彼女は訳もわからず勢いのまま、共にいたエンジュの友であるチルタリスを襲う。
オミシャに呼ばれて駆けつけたエンジュが咄嗟に取ったのは――メガシンカではなく、チルタリスを庇い、そのままラトルテに葉刃を振りかざすことだった。
エンジュが、自分に、危害を与えた。
峰打ちに我を取り戻したラトルテに、その現状はどうしても、どうしても受け入れられないものであった。
咄嗟に「違う」と口に出すエンジュから血の気が引いて、何か取り繕うかのようにラトルテを呼ぶ。
けれど彼女にその声は聞こえず――聞こうとはされず、耳を塞いだラトルテは、彼から背を向け逃げ出した。
エンジュは呼び止め手伸ばすものの、雷に焼かれ瀕死のチルタリスを抱えたその場を動こうとはしなかった。代わりに彼女を追ったのは、彼女をよく知るオミシャだった。

あれほどラトルテが傷つくのを気にかけていたエンジュが、自らラトルテに傷をつけた。
慰めようとそばに控えたオミシャをよそに、エンジュをそうさせたものは何なのか、考えた末にラトルテは知ってしまう。
穏和な彼が刃を向けるのは、大事な者を守る時だと。あの時彼が守ったのは、他でもなくあのチルタリスだったと。
優しい彼は、いつだって誰かを秤にかけないのだと。敵も味方も傷つけず制止にかかっていた彼が、今日はチルタリスに傾いたのだと。
自分が光で彼女を焼いたのは、力の暴走のせいではなかったのだと。彼女に嫉妬していたからなのだと。ワタシは彼女に、負けたくはなかったのだと。
エンジュがチルタリスを庇ったのは、エンジュが彼女を大切に思っているからなのだと。エンジュがワタシに刃を向けたのは、大切な彼女に傷を付けたからなのだと。
ワタシが今とても苦しいのは、私はエンジュを、恋慕っていたからなのだと。

けれど気付くには、もう、遅かった。

「……ワタシの、負けだ」

負けを認めるのは、こんなにも辛い。だから負けるわけにはいかなかったのに。
どうしようもない敗北感に、彼女はただ、泣いた。



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