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小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
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「わあっ……」


暖かに流れる風に吹かれ、歓声が聞こえる。

より近くで見る花の海を前にして、そう感嘆するよりほかになかった。
燎原の火のごとき勢いで、少し後ろを流れるそれなど耳に入らない。気付かない。


「狐笛殿、このどこかに居られるのでしょうか?」

しばらくそれらに心を奪われていた後、燕紅がおずおずと切り出す。
その言葉があとの二人に現実へと引き戻すような感覚を与える。
はっと恍惚の心地から頭を冷まされると、慌てて少女は口を開いた。

「見た感じだと、誰もいないように見えるけど……」

ライラはそう言いながら頭をぐるりと一回りさせる。

その一周の中で視界に映ったのは花畑と、急流と、森と、一行だけだ。


ここは平地。
だから、かなり遠くのほうまで見渡すことも出来るのだけれど、ざっと見た感じだと何かしらの影は見当たらないように思える。

それにはたして、狐笛が自分たちと同じようにつり橋を見つけて渡っただろうか。
一行は運良く猫に出会ったことでこちらの土地に足を踏み入れたものの、狐笛が同じような偶然に見舞われているとは到底思えない。
自力であのつり橋を見つけるよりほかはない。



「……花畑、どこまで続いているのでしょうね」
「どうかな。多分向こうは海だと思うけど」

あの川の幅を見る限りでは下流のものだ。
今は荒れているが、いつもは流れも穏やかだろうとうかがえる。
となれば海も近い、かもしれない。

ライラは答えた後、シルビィに目を移す。
すると視界に映った彼はどこか、花畑の遠くを見ているはずなのに、それを見てはいないようだった。
(木々に導かれ、ひとり林の奥にきた猫。そこで――)
(突如聞こえた爆発音。慌てて駆けつけるとそこには……すでに何もなかった)
(ひとまず基地に戻った一行。もう日も暮れるという時に、かすかに聞こえたノック音――)
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