小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
(ひとまず基地に戻った一行。もう日も暮れるという時に、かすかに聞こえたノック音――)
ユエとコリル、それからシープライミィエトヴァスに見送られ、アチーヴの皆はとりあえず基地に戻ることにした。
クサリに能力を解かれてもフォニアはすねたままであったし、フォイリヒは未だに笑いを堪え切れていないようで部屋から出てこようとはしなかった。
「ふーん……結構普通の基地なんだね」
パタン、と扉を閉めたあと、咲羽が基地内を見回した。
「普通で悪かったですね」
「んー、俺別に悪いだなんて一言も言ってないけど?」
タンゴはそれにやはり苛立っているよう。
さっきのスノウリンとクランプの言い争いを見た後だと、この二人もそのうちああなりそうで心配である。
「まあまあ落ち着きぃ二人とも!咲羽君の部屋はあれやから、後で見てきたら~?」
「あー……それもそうだね♪じゃあ、そうしてくるよ」
猫がどうにかその場を中断させると咲羽はフワリとタンゴから方向を変える。
そうして咲羽が見えなくなって、ほんの数秒のうちであった。
――トントントン……
「?あれ……?」
「あはは、タンゴってばシロワタと仲良いんだねぇ!!」
「よ、よくないにきまってるだろ!?あれのどこがそう見えるのさ?」
幼馴染の二人の会話が大きくて誰にも聞こえなかったようだが、明らかにそれは扉をたたく音。
時は夕方、こんな時間に依頼でも来たのだろうか。
「どうかした猫?」
「いや……何か扉をノックする音っつーんかな……」
「……客だろうか?」
猫とアネシアとの会話を聞いたクサリがそう呟きつつ扉を開ける。
空けた先には赤い空が広がっていて、
「すみません……今晩、泊めて頂けないでしょうか?」
扉の前にはネイティオが立っていた。
▼18話 占い師
「わざわざすみません。ただでさえ御迷惑が掛かるというのに……」
アネシアが茶を勧めると、彼は礼儀よく頭を下げる。
口調も敬語であり、どこか神秘的だった。
「いいえ、困った時にはお互い様よ」
「そーそ♪それよりアンタなんて名前なのっ?」
ラナが駆け寄ってそう尋ねる、ネイティオはそうでしたね、と一咳の後口を開く。
「エルウィンディ・ティオネスト……長いので、エルウィンで宜しいです」
「うん了解ー!!」
そう元気に返事をすると、彼女はパタパタと自室に戻っていく。
ニックネームでもまた考えるつもりだろうか。
タンゴがその様子を見て溜息をつく。
と同時に、エルウィンの持ち物であろうあるものに目を惹かれてしまう。
「あの、これって……水晶ですか?」
ひょい、と持ち上げて見ると、光が屈折して見事に透明な球体が輝く。
ただのガラス球のようにも見えるし、そうじゃないような気もする。
「はい。僕は占い師でしたから、仕事道具でもあったんですよ」
「今は違うのか?」
「……今は各地を周って旅をしています。なので最近はこれを使った覚えもありませんね」
クサリも少し興味ありげに問うと、エルウィンは優しく返す。
そんなやり取りの中、やはり一番に興味を持っていたのは猫で、水晶を見て気楽に呟く。
「占いっつーたらきいた事あるなぁ~未来とか過去とか見えるんやろ?」
「そうなりますね。僕も一応、その類のことは出来ますから……元々ネイティオはそういう事が出来るんですけどね」
「あ、それやったら!クサリ」
いい事を思いついた、というような顔を向け、猫はクサリを尋ねる。
「泥棒事件と爆発事件……エルウィンやったら何か分かるんとちゃう?」
そう言って今度はエルウィンを見る。
彼はどうも何のことなのか今一掴めないようで、キョトンとしたように猫を見る。
「事件……何かあったんですか?」
「昨日から何かが盗まれたり、各地で爆発が起こったりしているらしい……私たちもさっきまでその犯人探しをしていたのだが……」
「どうも何も掴めなかった、というのですね。わかりました」
クサリの言葉を最後まで聞かずとも推測でそう言うと、どこか納得いったように微笑んだ。
それに皆、何のことなのか分からないのは当然で首を傾げる。
「ど、どないしたん?」
「あ、いえ!その事だったんですね……やっと納得いきました」
「……何が?」
そこに咲羽が出てきて、初対面であるにもかかわらず第一声にそう訊く。
エルウィンはその唐突な問いに何を戸惑う事もなくこう言ってのける。
「僕、さっき申したように未来が見えるのですが……この基地に入ってからとある出来事が見えてたんです。それが丁度……」
「この基地の近くで爆発が起こる……というもので」
――ドーーーーンッ!!!
「!!?」
突如の爆音に一同身を振るわせる。
その衝撃なのだろう、少しばかりの振動がここにまで伝わってくる。
「な、今の……爆発!?」
「ねーね?何、なになに今のッ!?花火大会でもやってるの?」
部屋からわくわくしたように顔を出したラナをすかさずアネシアが連れる。
いきなりだったが、これが爆発事件、というのは間違いなさそうだ。
「隣の林から、か。行くぞ!近くに犯人がいるかもしれない」
「そ、そやね!!日が沈む前やったら見つけられるかもしれへんもんね!!」
クサリに続いて、猫が基地を飛び出す。
「わぁ面白そうじゃん♪スリリングスリリング!!」
「私たちも行きましょう。手伝わないと」
「で、ですよねっ!!」
それに続いて皆も出て行く。
以前エルウィンは基地の中……咲羽も同じだ。
「アンタも勿論手伝うよね?」
「え?」
咲羽の唐突に、今度ばかりは驚いてしまう。
確かに手伝うべきであるが驚いたのはその発言にではなく、咲羽の声が少々苛ついている事だった。
「アンタ、未来が見えててわざとこの基地に入ったんでしょ?」
ネイティオは未来が見える。
咲羽はそのことをよく知っていた。
「爆発起こるって分かってたんなら、先に言えっての……そうしたら犯人探しだってすぐ終わるのにさ」
「しかし、いきなりお邪魔して、すぐ近くで爆発が起こるなどと言って、誰が信用します?ましてや未来が見えるなど……到底信用してくれる方は少ない」
エルウィンはそれに冷静に返すが、咲羽は客人だろうがそうでなかろうがお構いなしに呟く。
「アンタが言ってくれればこっちは凄く助かったんだけど♪迷惑掛けておいて、そのいいようは何?」
「……」
「つーわけだから、アンタも手伝いなよ?心配する事無いって、俺もここの人達と会ったのは今日が初めてなんだし」
そう言いくるめ、咲羽はエルウィンを引き連れて後を追った。
クサリに能力を解かれてもフォニアはすねたままであったし、フォイリヒは未だに笑いを堪え切れていないようで部屋から出てこようとはしなかった。
「ふーん……結構普通の基地なんだね」
パタン、と扉を閉めたあと、咲羽が基地内を見回した。
「普通で悪かったですね」
「んー、俺別に悪いだなんて一言も言ってないけど?」
タンゴはそれにやはり苛立っているよう。
さっきのスノウリンとクランプの言い争いを見た後だと、この二人もそのうちああなりそうで心配である。
「まあまあ落ち着きぃ二人とも!咲羽君の部屋はあれやから、後で見てきたら~?」
「あー……それもそうだね♪じゃあ、そうしてくるよ」
猫がどうにかその場を中断させると咲羽はフワリとタンゴから方向を変える。
そうして咲羽が見えなくなって、ほんの数秒のうちであった。
――トントントン……
「?あれ……?」
「あはは、タンゴってばシロワタと仲良いんだねぇ!!」
「よ、よくないにきまってるだろ!?あれのどこがそう見えるのさ?」
幼馴染の二人の会話が大きくて誰にも聞こえなかったようだが、明らかにそれは扉をたたく音。
時は夕方、こんな時間に依頼でも来たのだろうか。
「どうかした猫?」
「いや……何か扉をノックする音っつーんかな……」
「……客だろうか?」
猫とアネシアとの会話を聞いたクサリがそう呟きつつ扉を開ける。
空けた先には赤い空が広がっていて、
「すみません……今晩、泊めて頂けないでしょうか?」
扉の前にはネイティオが立っていた。
▼18話 占い師
「わざわざすみません。ただでさえ御迷惑が掛かるというのに……」
アネシアが茶を勧めると、彼は礼儀よく頭を下げる。
口調も敬語であり、どこか神秘的だった。
「いいえ、困った時にはお互い様よ」
「そーそ♪それよりアンタなんて名前なのっ?」
ラナが駆け寄ってそう尋ねる、ネイティオはそうでしたね、と一咳の後口を開く。
「エルウィンディ・ティオネスト……長いので、エルウィンで宜しいです」
「うん了解ー!!」
そう元気に返事をすると、彼女はパタパタと自室に戻っていく。
ニックネームでもまた考えるつもりだろうか。
タンゴがその様子を見て溜息をつく。
と同時に、エルウィンの持ち物であろうあるものに目を惹かれてしまう。
「あの、これって……水晶ですか?」
ひょい、と持ち上げて見ると、光が屈折して見事に透明な球体が輝く。
ただのガラス球のようにも見えるし、そうじゃないような気もする。
「はい。僕は占い師でしたから、仕事道具でもあったんですよ」
「今は違うのか?」
「……今は各地を周って旅をしています。なので最近はこれを使った覚えもありませんね」
クサリも少し興味ありげに問うと、エルウィンは優しく返す。
そんなやり取りの中、やはり一番に興味を持っていたのは猫で、水晶を見て気楽に呟く。
「占いっつーたらきいた事あるなぁ~未来とか過去とか見えるんやろ?」
「そうなりますね。僕も一応、その類のことは出来ますから……元々ネイティオはそういう事が出来るんですけどね」
「あ、それやったら!クサリ」
いい事を思いついた、というような顔を向け、猫はクサリを尋ねる。
「泥棒事件と爆発事件……エルウィンやったら何か分かるんとちゃう?」
そう言って今度はエルウィンを見る。
彼はどうも何のことなのか今一掴めないようで、キョトンとしたように猫を見る。
「事件……何かあったんですか?」
「昨日から何かが盗まれたり、各地で爆発が起こったりしているらしい……私たちもさっきまでその犯人探しをしていたのだが……」
「どうも何も掴めなかった、というのですね。わかりました」
クサリの言葉を最後まで聞かずとも推測でそう言うと、どこか納得いったように微笑んだ。
それに皆、何のことなのか分からないのは当然で首を傾げる。
「ど、どないしたん?」
「あ、いえ!その事だったんですね……やっと納得いきました」
「……何が?」
そこに咲羽が出てきて、初対面であるにもかかわらず第一声にそう訊く。
エルウィンはその唐突な問いに何を戸惑う事もなくこう言ってのける。
「僕、さっき申したように未来が見えるのですが……この基地に入ってからとある出来事が見えてたんです。それが丁度……」
「この基地の近くで爆発が起こる……というもので」
――ドーーーーンッ!!!
「!!?」
突如の爆音に一同身を振るわせる。
その衝撃なのだろう、少しばかりの振動がここにまで伝わってくる。
「な、今の……爆発!?」
「ねーね?何、なになに今のッ!?花火大会でもやってるの?」
部屋からわくわくしたように顔を出したラナをすかさずアネシアが連れる。
いきなりだったが、これが爆発事件、というのは間違いなさそうだ。
「隣の林から、か。行くぞ!近くに犯人がいるかもしれない」
「そ、そやね!!日が沈む前やったら見つけられるかもしれへんもんね!!」
クサリに続いて、猫が基地を飛び出す。
「わぁ面白そうじゃん♪スリリングスリリング!!」
「私たちも行きましょう。手伝わないと」
「で、ですよねっ!!」
それに続いて皆も出て行く。
以前エルウィンは基地の中……咲羽も同じだ。
「アンタも勿論手伝うよね?」
「え?」
咲羽の唐突に、今度ばかりは驚いてしまう。
確かに手伝うべきであるが驚いたのはその発言にではなく、咲羽の声が少々苛ついている事だった。
「アンタ、未来が見えててわざとこの基地に入ったんでしょ?」
ネイティオは未来が見える。
咲羽はそのことをよく知っていた。
「爆発起こるって分かってたんなら、先に言えっての……そうしたら犯人探しだってすぐ終わるのにさ」
「しかし、いきなりお邪魔して、すぐ近くで爆発が起こるなどと言って、誰が信用します?ましてや未来が見えるなど……到底信用してくれる方は少ない」
エルウィンはそれに冷静に返すが、咲羽は客人だろうがそうでなかろうがお構いなしに呟く。
「アンタが言ってくれればこっちは凄く助かったんだけど♪迷惑掛けておいて、そのいいようは何?」
「……」
「つーわけだから、アンタも手伝いなよ?心配する事無いって、俺もここの人達と会ったのは今日が初めてなんだし」
そう言いくるめ、咲羽はエルウィンを引き連れて後を追った。
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