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小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
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「何……言ってんの、アンタ……?」


まだ幼い少女はその思いを隠しきれない。
目に見える困惑の色が少女を呑み込む。
何度か繰り返し、少女はその言葉を怯えた目で呟くが。


「…………」


彼の返事は、無い。
俯いた状態をひとつとして崩すこともなく、少年はその言葉からまるで、逃げるように目を伏せた。
それはそう、先程の発言に間違いが無いと言うことの証明のよう。
少女はそれにすぐさま噛み付く。

「な、何で!?何でなのよッ!?何で答えないのよッ!!!」

飛び付くように自分より背の高い少年に掴み掛かると、険しく一変したその顔を、少年のそれにぶつかりそうなほどに近付ける。
怒りととれるその言葉は至近距離で浴びせられた。
が、少年は目を開くことも返事をすることもなく、ただただその状態から硬直を解かないままで。
しばらく時が止まったかのように互いにそのままの状態が続く。
しかし、ついには掴みかかったその手が震え出す。
まだ強気にあった少女からその意気までもが弱まる。
だが痺れを切らしたか、もう片方、空いていた左で強く、硬く、拳を握った。

「な、何よ……んな……変な嘘つくのもいい加減にしなさいよ!!」

ギッと鋭い眼光が表されたと同時、拳は大きく後ろへと構えらる。
そのままそれは、少年に目掛けて……――

「お前」

彼の顔面寸前。左が、その言葉で止まる。
ようやく、とした感じで微かに少女は期待を抱いたが、依然として少年は目を伏せたまま。
それが開く気配は無く、また少女の拳が数ミリとしてぶれることも無かった。
広がる沈黙。
静止した両者に、空からの白だけが嵩を増して積もりゆくのが分かる。
不審に感じるも、少女はとりあえずは続きの言葉を待つとした。
けれど、再び震えだそうとする左。
すると。

「あいつの事……死んで欲しいとかぬかしてなかったか……?」

小さな声で、彼はそう言う。
瞳が、揺れる。鏡がなくても分かる、と少女。
それは言い訳でも、事実でも、はたまた嘘でも無く、少女にはとても予想外な発言だった。
彼のその声は、微々に震えていて。
その声色に何だか安心したような感覚が沸き上がる。
また同じように震える瞼を、少女の瞳は逃さなかった。
そこで少女は悟る。コイツのせいじゃない、と。
構えていた左が、力が抜けたようにだらりと落ちた。

「……ふ」

そう感じたからかどうか、クスリと無意識の苦笑が零れる。
なんだ、そんなこと。
そうひっそりと一人言をもらす。
険しい顔が段々歪み、酷く悲しげな顔が覗く。

「嘘に決まってるじゃない。嫌いになれるワケ、ないじゃないの」

だってアイツは。
少女がそう続けようとしたものを、少年は別の言葉で制止させた。


「……そっか」


ようやく開かれた目に、少女はそれ以上もう、何も言えなかった。
降り続けていた雪でよく見えなかったけれど。



――その目から、涙が零れた気がした。




(アタシよりコイツのほうが、何百倍も辛い……か)

――――――――――――――
■フォニア(ミミロップ♀)
■フェデラル(オオタチ♂)



それはとても幻想的な雪の夜のことだった。
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