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小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
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(これもまた、ある晴れた日のことでした――)

「どこまでいったんやろ……あの二人」

猫はそうやってトレジャータウンを見回す。
今日は皆休みが取れたため、全員でここまで来たわけなのだ。


あれから数日して、アネシアはアチーヴに入隊する事となり、治癒術を使うタンゴにとって彼女は尊敬できるに値する人物となってしまった。
そのためその二人は一緒にどこかへ行ったのだが――

「集合時間過ぎてんのに……!」

そんなことをぼやきつつ、小川に架かる木造の橋を渡る。

そして見えてきたカクレオン商店前で、目的の人物と別の影を発見した。



▼13話 午後の買い物の最中に



「あのっ、わざわざありがとうございます!!」
「いえ、僕はあなたが落とした木の実を拾って届けただけです。当たり前のことをしただけですよ」


頭を下げるタンゴの前でデンリュウが困ったように微笑む。
そのデンリュウの隣のネオラントが代わりに続けた。

「あーもう礼はいいからいいから。俺ら急がねぇといけねぇから、そろそろ行くぜ?」
「あ、そうだったんですね。引き止めてしまってごめんなさい!」

そういってまたも頭を下げる。
ネオラントはそれに呆れたような表情を隠しきれてなかったが、急いでいることもありデンリュウを連れて早々と立ち去ろうとする。


「またお会いしましょうね」


と、最後にデンリュウが小さくお辞儀した。

「――あら、猫?そっか、私たち戻るの遅れたから探しに来てくれてたのね」
「ん~?いいってそんなん。それよりなんかあったん?」

こちらに気付いたアネシアが申し訳なさそうに苦笑し、ちらとタンゴを見やる。
タンゴはまだ猫に気付いてないよう。

「――かっこいいですね!!」
「え?」

いきなりタンゴは振り向き、そう猫に目を輝かせて述べる。
どうもそれは彼が誰かを尊敬した時に現れるあれと同じである。

「オイラが落とした木の実をわざわざ届けてくれたんですよ!しかもすっごく優しかったんですよ!!」

良い方ですよ!と一頻感想を述べるのを待って、アネシアが口を開く。

「フフ、それはよかった。けれどクサリとラナをこれ以上待たせるのはダメでしょ?」
「……あ」

その言葉にタンゴは思い出したかのように声を漏らす。
そうだった、と慌てたように猫を見る。

「まあ、しゃあないって!今から早う戻ったら大丈夫やで♪」
「そ、そうですねっ!じゃあ急ぎましょう!」


どうも迷惑を掛けてしまう事に責任があったようで、真っ先に早足で進みだす。
慌てて猫とアネシアも後を追う。タンゴは慌てると何を引き起こすか分からない。



ただ予想はやはり的中してしまい、


「うわっ!!?」


丁度橋を渡る辺りで、見事にタンゴは転んでしまった。

持っていた袋の中の木の実が中に放り出される。


「だ、大丈夫?」
「いった~……大丈夫です。あ、木の実!」

アネシアに支えられながら立ち上がると声を出す。
周りにはオレンやモモンなどさまざまな木の実が散らかってしまっている。

「あわわ……早く集めないと……!」

タンゴがそう呟いてしゃがみ込む。
木の実を集めようとした、その時に。


「コラァァ!?ガキ!」


いきなりの怒声にタンゴが、アネシアも肩を跳ね上がらせる。
猫がその先を見てみると、かんかんに怒ったオニゴーリを確認できた。
オニゴーリはそのままこちらの方へずかずか進んでくる。

「あ、あの……?」
「何があのーじゃ!?お前のぶちまけた木の実が俺に思い切り当たったんだぞ!?」

そう言って足元に転がっていたチーゴの実――オニゴーリに当ったものではないが――を睨みつける。どうやら不良のようだ。

「ま、まあまあ!タンゴ君やって悪気はなかったんやし許したったら……」
「テメエは引っ込んでろ!!」
「うわッ!?」

ドン、とかなりの力で近くの植え込みのほうに突き飛ばされる。
衝撃で木の葉が騒ぐ声のほかに、何本か枝の折れる音が聞こえた。
突き飛ばされた時の力が凄まじかったため、猫はしばらくは立ち上がれそうにないな、と直感する。

ただその間にもオニゴーリの怒りはタンゴに向けられる。

「何やガキ!?罰金でも払えや!!」
「ば、罰金なんて……タンゴはそこまで悪い事してないでしょう……?」
「ああ?テメエナメとんのか?」

アネシアが弁護した事により、怒りの矛先が両者に向けられてしまう。
クサリやラナなら対処できるかもしれないが、タンゴとアネシアには到底対処は出来ないだろう。
しかも周りのポケモン達はこの一方的ないい争いを見てみぬ振りして遠巻き立ち去っていく。


「俺に歯向かおうとはいい度胸やねエか!!?」

オニゴーリはそう吐いて冷気のようなエネルギーを集め始める。
相性的に氷の技は二人には何とも無いが、当も近距離で怒り狂った相手のものではそれも違ってくる。
ましてやその技が「絶対零度」だったのだから、相性なんていよいよ関係ない。

「喰らえ!!」


十分に溜め込んで、撃つ。
――と、思えた。



「公衆の場で喧嘩はよくないなあ」


ぐい、と争いに割って入ってきたのはチルタリス。
彼は左翼でオニゴーリの冷気を受け止めた。


「……え?」


一番に声を上げたのは猫。
タンゴとアネシアは恐怖のあまりに目を伏せてしまっていたため、何が起こったのか認識できなかった。
オニゴーリが惑いと怒りを交えた声を出す。


「な、何だ貴様!?」
「え、俺?見てのとーりチルタリス?アンタとすっごく相性が悪いね♪」


氷技が最大の弱点であるというのに、彼はそう笑って言ってのけた。
信じがたいことに、絶対零度はこのチルタリスに防がれたよう。

「んなの分かってる!!氷技を叩き込めばテメエなんか敵でもねエんだよ!!」

オニゴーリは急ぎ冷凍ビームの準備を始める。しかし、

「遅いね?」
「……!!?」

瞬間チルタリスの火炎放射が掠り、オニゴーリは目を見開く。
余裕の表情でチルタリスが怪しく微笑む。

「で、次は何の技を見せてくれるのさ?俺さっきから楽しみにしてるんだけど♪」
「ひいぃぃィイ!!?」

勝ち目が無いと直ぐに悟り、オニゴーリは目にも留まらぬスピードで逃亡する。

しかしチルタリスはそれで満足できぬよう。
残念そうに一言、

「へぇ、弱いんだねアンタ」

また瞬間。オニゴーリの頬を何かが裂いた。
浅い切り傷が出来ているが、火炎放射が飛んできた気配はなかった。
恐る恐る振り返るとチルタリスが楽しげに笑っている。

「どうかした?……ああ、ソレ?」

いかにもオニゴーリが青くなったように見ていたのだろう。

「え、さっきの……何?」
「あ、見えなかった?思いっきり勢いつけてあいつにエアスラッシュしてやったんだよ」

猫が呟いたのが聞こえたのか、チルタリスはつい、と首を不良に向ける。
それから背後のタンゴとアネシアに視線を向けてから、そいつに低く吐き捨てた。

「だってアンタなーんにも謝ってないじゃん?謝んなかったら消すけど」

まるで何か脅しのように聞こえるそれにオニゴーリは身を振るわせた。

「す、スミマセンでしたー!?」

彼は無理やりな謝罪を叫ぶと、今度こそ逃亡に成功した。


その姿が米粒以下になるまで見送ったあと、チルタリスは口を開く。

「後ろの二人とー……そこのエネコロロさんも無事?」
「え、ええ。私たちは大丈夫」
「俺はちょっとだけ痛い~……」

後で治すから、とアネシアが猫に呟く。

タンゴはじっとチルタリスを見上げており、それに気がついた彼はニコニコと微笑んで、

「次から気をつけなよ。ガキ」
「なっ……ガキ?」
「もともと不良を怒らせたのはアンタだろ?それに不良にガキって言われてたじゃん♪」

どうやら彼は争いを少しばかり見ていたよう。
タンゴは言うに言えなくなるもどうにか反抗を続ける。

「オイラはガキじゃなくてタンゴですっ!そういうあなたはなんなんですか!?」

苛ついた様にそっぽを向く。
それを見てチルタリスはそうだった、というような素振りを見せながらさもすんなりと言ってしまった。

「あー俺ね、チルタリスの咲羽(サワ)。リリーフって救助隊に住まわせてもらってるんだ♪ま、よろしく♪」
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