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小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
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(一難去り、猫はクサリと合流し新たな話を聞かされて――)

「その馬鹿らしい声……クビャクか?」

崩れて木の葉と化した壁の残骸を見やり、その場から動こうともせず呟く。
かわりにクビャクが歩み寄って、

「馬鹿とは失礼だねー…そうだよボクだけどー?」
「ん?アンタら知り合い?」
「知り合いも何も、そいつは俺らのチームのラルフだ」

クビャクがいきなり喋りかけているのを不思議そうに聞いた猫に、ブライが割るように説明する。

「んで、さっき言ってたアイツって言うのがラルフのことだぜ?」

そしてすぐ隣のタンゴに向き直り続ける。
タンゴは納得いったように頷いている。


「ところでクビャク、あの姉弟を見かけなかったか?」
「んー?舞羽ちゃん達のことー?ラルフ君一緒にいたんじゃなかったっけー?」
「ああ。あいつら気がついたら消えていて……」

そんな間にも二人はぶつぶつと何かを話している。
内容的に誰かとはぐれたようだが。


ザワリ。


しかしそんな中、小さな物音が猫の耳をかすめる。
皆には聞こえていない木の葉の音。

瞬時に方向を探り当て、見上げた先――丁度ラルフの後ろでゆらゆらと浮かぶそれを見つけて。
それ――猫が倒し損ねたゴースは既にシャドーボールの力を溜め込んでいて、確りラルフに狙いを定めている。


「アンタ後ろッ!!」

猫が大きく叫び、ラルフがそれを振り返るが、避けるのに間に合いそうに無い。

――当たるっ!


猫は心でそう呟いて目を伏せる。


しかし一瞬、森の中に引き裂くようような音が響く。

それが何か、その時は分からなかったが、一緒にゴースの悲鳴が猫の耳に届いた。



▼11話 それは古い昔からの絆



「――……?」

猫は恐る恐る目を開く。
ラルフは相変わらず平然と立っていて、代わりにゴースが倒れている。
そこには何かで引っかかれたような傷が残っている。
あともう一つ、さっきまでいなかった筈の影が視界に映る。

「疲れたー……ラルフ!いくらなんでも速すぎ!追いつくのに精一杯だったんだよ?」

いきなり現れたと思ったら、ニャルマーは不服そうにラルフに詰め寄る。
ゴースはこのニャルマーのシャドークローで一発ダウンさせられたのだ。

しかしラルフは関心が無い、とでも言いたげ。

「そんなつもりはなかったが……」

と、一言。

「あ……スピネル……?」
「そうだねー。ラルフ君スピネルちゃん放っていったみたいだねー」

猫とタンゴの耳に、ユリウスとクビャクのそんな会話が入ってくる。
どうやらこのニャルマー――スピネルも仲間のようだ。


「そりゃ人探しも大事だけどさ!クサリとラナがはぐれたらダメでしょ?」


ピクリ。彼女の発言に猫とタンゴは逸早く反応する。

「クサリに、ラナちゃん?」
「あ、あのっ!姉御とラナがいるんですか?」
「え?あ、うん。丁度目的も一緒だったから一緒に行動してたんだよ」

一瞬戸惑うように目をぱちくりさせたが、猫たちとクサリたちが仲間である事に気がついたよう。
タンゴが今どこに?とでも言いたそうにしていたのにも勘付き、

「もうすぐ来ると思うけど――あ!」

スピネルは少し先を伺って明るい声を上げる。
彼女の視線の先に映った者は、猫がよく知る人物であった。

「あーニャンコにタンゴ♪こんな事にいたんだ!!」
「すまないなスピネル。ラナが何度か寄り道しててな」

いかにもこの危険な森を満喫しているラナのとなりで呆れて言うクサリ。
何を寄り道したのか気になる所だがさて置き、

「ううん、気にしないでよ。ラルフが速かったのも原因だから」

スピネルはさり気無くラルフに視線を向ける。
しかし彼は何食わぬ用に遠くの方を見回している。


「あれ?タンゴってばやっぱり恐くなってニャンコと一緒に行ってたんだ?」
「ちっ……違うさ!?んなわけないだろ!」

気付いたように言ったのを、タンゴは全力で否定する。
それを見て確信づいたように笑うラナ。
クサリとラナがこちらに来て猫はふと、あることを思い出す。

「そういや、今さっきスピネル『目的が一緒』っつったよな?それってどういう……」
「例の、『あの子』の事だ」

猫の横でクサリが静かに呟く。
すると「そうだよ」とスピネルが続ける。

「クサリから聞いたけど、あなた夢を見たんだよね?『あの子』を探せって」
「うん…そうや」
「同じものをラルフが見たんだ。しかもあなたのよりももっと詳しいヤツを」

スピネルは猫から視線を外し、ちらとラルフに向ける。
遠くを伺っている彼の行動は、よくよく見ると誰かを探しているようにも見える。

「詳しくって、例えばどんな事です?」
「あーそれはねぇ!」

タンゴが尋ねたのを耳にし、ラナが元気よく口を開く。

「どんな人が来るかって事ー……だったよね!?」
「うん、そうそう♪」
「ちょ、ちょっと待って?」

満足げに頷いていたスピネルに、猫が疑問を投げた。
「今、人って……?」

恐る恐る、とでも言いたげに呟く。
何故恐る恐るかは分からなかったが、クサリが一言、

「人間らしい…といっても、お前みたいに姿が変わっているらしいがな」
「そんなん……姿が変わってたら分からんのやないん…?」
「それなら大丈夫だそうだ……変化した姿もラルフが夢見たそうだからな」

クサリは明確に、淡々と告げた。
彼女はラルフとスピネルに色々と聞いたのだろう。だからこんなにも頼りがいがあるのだ。


「でも……」

そこでタンゴが不思議気にポツリと、
「なんでラルフさんのほうがそんなにもよく分かっているんですかね?猫さんだって同じ夢を見たはずなのに」
「あーそういえばそうだよね!!ひょっとしてニャンコは忘れたりしたんじゃ?」
「そんなことは無いって!確かに確り覚えとるし!」

「多分、あれじゃないのかな?」

3人が言い合っているのを見て、スピネルは自信無さ気に言う。

「姉弟って凄く絆が強いって言うよね?だからラルフには猫よりも強く夢に現れたのかもしれないと思うんだ」
「……?きょうだい?」
「あ、言い忘れてたね!その子の種族はジュゴンらしいよ?ラルフが言ってたとおりならね!」

猫が尋ねたのを聞き逃したのだろうか、彼女は質問と違うことを呟く。
そのため猫は再び聞かなければならない。

「いま姉弟って言うたよな……?それって?」
「そのままの意味だ」

クサリがやはり淡々と告げる。そして続けてポツリと、


「ラルフは元々人間。そして『あの子』って言うのはラルフの生き別れの姉のことなんだ…」


スピネルが小さく、まるでラルフに聞き取られでもしないように呟いた。
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