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小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
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(ふたり組――シープとクランプを手伝い、一行は騒ぎの犯人を追いかけていました)

「フフフ♪技マシンが5で鍵が1、オマケに白いグミまで見つけちゃった!!今日の収穫も絶好調~」


トレジャータウンの外れの森で、フードのようなものを被って姿を隠しているポケモンが上機嫌に呟く。
さっきのカクレオン商店に泥棒に入ったのはもちろんこのポケモンの少女である。
「シープもクランプもちょろいちょろい……あんなんじゃアタシを捕まえようなんて一生無理ね!!」

盗んだものが入っていると思われる袋を担いで、このまま帰ったらあれだなぁ、と思いながらもごちる。


――と。


「!?……何……銀の針?」

ビッと、いきなりこちらに飛んできたそれを交わし、警戒する。
何かいる。

「当ったり♪さっすが泥棒だから道具に詳しいんだね」
「……何よアンタ」

彼女は面倒くさそうに呟いて、向こうからニコニコと現れたチルタリスを見やる。
チルタリス――咲羽は、それを聞いて当たり前らしく言う。

「え、俺?アンタの盗んだもの取り返しに来たんだけど、悪い?」

やっぱりねぇ、とポケモンは呟くと、いかにも憎たらしそうに返した。

「あったりまえッ!!誰がアンタなんかに取り返されるモンですかッ!!」



▼16話 犯人?VSアチーヴ



「アハハ♪なーんだ、遅い遅い!!そんなんでアタシを捕まえられると思ってんの?」

そうあざ笑いながら森中を縫うように逃げる。
その後を咲羽が同じように追う。
犯人は高速移動で素早さを上げるが、咲羽も高速移動は覚えているために、どちらも同じくらいの速さとなっている。
が、逃げているほうが一枚上手だ。

「あー面倒……エアスラッシュ!」

鬼ごっこにも嫌気がさしてきたようで、咲羽は犯人の少し前を狙ってそれを打つ。

「だーかーらッ!!そんなのであたしは捕まらないってば♪……仕方ないわねぇ、暇だし、相手してあげるわよ♪」

風の刃を軽々と避けると方向を転換し、さっきとは間逆――つまり咲羽に向かって走ってくる。
そうして彼に十分に接近した所で、

「ねこだましッ!!」

バンッ、と意表をつくそれが咲羽の目の前で繰り出された。
犯人はそのまま咲羽を飛び越え、彼の後ろにぴょんと着地する。

「!?……なんだ、小さい技じゃん」

ねこだましによって怯むも、強がりに似た発言で犯人を挑発してみせる。

するとくるりと振り返って勝ち誇ったように笑いを浮かべてくる。

「なーんて、それだけなわけないでしょッ!!」
「……!!?」

いきなり跳躍し、真上から咲羽目がけて拳を振り下ろす。
間一髪で避けるも、犯人の使った冷凍パンチは咲羽の最大の弱点でもあり、やはり完全に避けきる事は出来なかったよう。

「最悪……左翼凍りかけてる」
「フフフ♪甘く見たからそうなったのよ!!」

氷柱のような物が取り付いた翼を見ている咲羽に、気味がいいように笑う。
彼女はそう言うともう一発冷凍パンチを御見舞いしてやろうと……


「はいっはーーい!!後方注意~♪」

「……だってさ♪」
「……へ?」

背後からいきなり声がし、咲羽がそれを笑って犯人に伝える。
彼女がばっと振り返った先で、ツボツボ――ラナが笑顔でこちらを見据えている。
……片手でどこから持ってきたのか分からないような巨木――根付きで葉まで生い茂った、おそらく引っこ抜いてきたと思えるもの――を持ち上げて。


「なっなな……何やってんのよ!?」
「いーちーにーの……さんっ!!」

怪力ラナのその行動を前々から知っていた咲羽は既に退散していたようで見当たらず。
掛け声とともに巨木が犯人に向かって投げつけられる。
あまりの重さに周りの木々がへし折られてバキバキッ、と小気味よい音を立てる。
こんなものの下敷きになってしまえば、それこそ別の事件になりそうだ。


しかし犯人はそれを見事な跳躍でするりとかわしていた。
そのときの衝撃でフードが取れ、正体であるミミロルの姿が顕になる。

「あーもうッ!?何よこれ……まさか謀られた!?」
「その通りですよ!!」
「な……ってうわわっ!!?」

また新たにした声に振り返ろうとしたが、着地した時にミミロルは滑るように転んでしまう。

――森の、土の上で滑るなんて……!?

恐る恐る見れば、地面は綺麗に凍り付いている。
すぐ近くの茂みで誰かと誰かがパチン、と手を叩いた。

「やりましたよアネシアさん!!」
「そうね、私たち冷凍ビームで頑張ったものね!」


――一度だけでなく二度も……!

連続して起こった出来事にミミロルは焦りと同時に驚愕する。

正体もばれてしまったし、退散するのが一番だろう。
丁度高速移動の効果も切れている頃だった。

「しかたないわね……高速移動♪さ、これで逃げ……」
「それはどやろね?」

またもいきなりの声だが、出所が分からない。
一瞬焦ってしまったのだろう、その隙を突かれて、
「ははっ♪ねこのてでアンタのこうそくいどう使わせてもらったさかい、堪忍してな~」
「なっ……」

いつの間にか背後にまわられていた。
その驚いた拍子にすんなりと盗んだ商品が入った袋を奪われてしまう。

「っつーわけで、返してもらうわ!」
「あーーーッ!?なんてことすんのよ!?」

エネコロロ――猫が一瞬のうちに飛び退いて、慌ててミミロルも追おうとする。
しかし足元が不安定でなかなか地面を蹴ることが出来ない。

そんな中に、


「『漆黒封鎖』……!」
「∑わわッ!?……もうッホントになんなのよッ!!?」

クサリが隙を突いて能力を発動。
ミミロルの周囲に真っ黒な鎖が金属の音を立てて出現したかと思うと、クサリの意のままにミミロップを縛り上げてしまった。
不運の連続に、ミミロップは不快そうな声を張り上げる。

「それはこっちのセリフだドロボーウサギ!散ッ々迷惑掛けやがって!」
「本当ですよ……少しくらい反省したらどうですか?」
「げっ……シープにクランプ……ア、アンタ達の仕業だったのね!?」

二人がミミロルに近寄ると、彼女は今だ強気の色を変えない声で対抗する。

「おうよ、俺らの仕業だぜ?ま、圧倒的にてめぇの負けだな」
「ひ、卑怯じゃない!!8体皆寄ってたかって!!」
「けど、泥棒したんは悪いことやろ?」

猫は彼女にさっき取り上げた袋を見せてみせる。

「アンタ……今に見てなさいよねッ!?ゼーッタイ後悔するんだから!」
「あはは、強気で何よりって感じだね」
「うんうん♪ホントホントぉ!!」

咲羽とラナがニコニコと笑う。
タンゴがシープに向いて、ぱぁっと目を輝かせた。

「やっぱり凄いですよ!!こんな作戦あんな短時間で思いつくなんて……シープさんものすごく頭がいいんですね!!」
「シープ!?アンタが主犯だったのね!」

タンゴの言葉でシープを睨むも、クサリが能力を強めたんだろう、ミミロルはそれ以上黙り込んだ。
クサリが言うには縛っている鎖は相手が騒げば騒ぐほど相手の体力を吸うらしい。

「いえ……僕は出来ることを行っただけですから」
「それより、これからどうするん?」

犯人を捕まえたが、盗んだものを戻したりしなければいけない。
また、今はミミロップも口が聞けない状態なので、例の泥棒事件についても聞きだせそうに無い。

「そうですね……とりあえず、僕らの探検隊基地にいらしてはどうでしょう?僕らの仲間なら盗んだものの事も何とかできますし、何よりあなた方はフォニアさんから事件について聞かなくてはいけませんし」

フォニア、と言われたミミロップは驚いたように首を振る。
何かをかなり拒否しているようだが、クサリが能力を弱めることも無い。

「だな。確かにコイツ、このまま縛り続けても何も言わねぇだろうけど……あれなら一発で全部白状するぜ?」
「……あれって?」

猫が、猫だけでなく他の皆もクランプのそれに疑問を抱いたが、彼はついてからの楽しみだ、といってそのことを教えてはくれなかった。

「それじゃあもうすぐ日も落ちてしまいますし、参りましょうか。構いませんね?フォニアさん?」


シープが尋ねるが、フォニアはまるで何かに恐怖するように視線をそらすだけだった。
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