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小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
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(フォニアを捕まえ、一行は彼女らの基地の前へと立っていました)

トレジャータウンのすぐ近く――と言っても、アチーヴ基地とは反対方向に当るが――に、シープとクランプ、それからフォニアの探検隊基地は構えられていた。
アチーヴ基地より大きいくらいだろうか。

話によると総員――一部仮隊員だそうだが――十匹であるようだ。


「ヴィビッツ……ヴィビッツって、コリル君とかの探検隊ちゃうっけ?」

表札のようなものを見つけた猫は思い出したようにクサリに尋ねる。
クサリもそう思っていたようで頷き、それを耳にしたシープが振り返った。

「……と言う事は、この前コリルが言っていた新人さんとは、あなた方のことだったんですね」
「うん、コリル君が言ってくれたで探検隊やったんやよ♪コリル君もおるん?」
どうでしょうね……、とシープが首を傾げていると、カチャリと中からドアがあけられた。
ひょこっと、タンゴとラナよりも幼さそうなワタッコが、にこっとした表情で見上げていた。


「皆さんお帰りなさい~。それからねぇ、はじめまして~♪お茶のねぇ、準備がねぇ、できてるんだよ~」
探検隊ヴィビッツ最年少・ライミヒューイことライミィに迎えられ、一行はヴィビッツ基地へと足を踏み入れた。



▼17話 再来、嵐のヴィビッツ



「わあ、猫にクサリ!久しぶりだね♪」
「あはは、そやねぇ~ひさしぶりやなぁ」
「……この前は世話になった」

気にしないでよ、とコリルは微笑む。
その隣でユエがアネシアを見つける。

「久しぶり……ラルフに聞いていたけど、元気そうでよかったよ」
「そうねぇ久しぶりユエ。あっちはスノウリンなんでしょう?」

アネシアが訊くと、コクリと頷く。
少々懐かしさというものでもあるのだろうか、アネシアは直感的に人間の時の知り合いは分かるようだった。


ユエはそのままクサリに、どこか申し訳なさそうに呟いた。

「……後で聞いたけど、コリルが迷惑かけたみたいで……それにあの時渡した依頼、難しくなかった?」
「いや、そこまで気にする事でもない……確かに大変な依頼だったが、いいくらいだったと思うぞ……?」

それを聞いて、ほっとユエは一息つく。
スノウリンが選んだ酷い依頼という事もあって心配していたが、クサリの口からそう聞くことが出来てやっと安心できたよう。
スノウリンの大丈夫は当てにならない。


「あの……あと、ほんとにゴメン……」


しかしユエは再びそう呟き、呆れたように溜息をついて基地内を見回す。
その隣のコリルは以前ニコニコとしたままで、なぜユエが謝っているかに気がついていない。
薄々、アチーヴメンバーも気がついてはいたが……


「黙ってりゃいい気になって……一々一々うるさいって言ってるだろ!?」
「んだと!?ってっめぇ仕事サボったと思えば何逆ギレしやがんだ!?」
「しかたないだろ、あんな朝早くから起きるなんて不可能に決まってるだろ!!虐めだろそれ!?」
「てめぇ朝寝過ごしただけだろオラ!?」


「あ、とうとう火がつきそうだよ?」

コリルがグレイシアとネオラントの様子を見やり慣れた様子で呟く。
それを気に、ユエの再びの溜息がつかれる。

「フォニアが黙ってるだけいいけど……うるさいよね……凄く」
「き、気にせんといてぇ……スノウリン君もクランプ君も喧嘩したい時くらいあるやろうし……」
「……大変だな」
「っていうか普段はフォニアさんまでアレに入ってるんですか……?」
「あはは♪面白そうだねぇ!!」
「怪我しなければいいんだけど……」
「っていうより馬鹿馬鹿しいよね。俺喧嘩好きだけど、あれに入りたくは無いね。馬鹿が移りそうだし」

ユエの呟きに続けて、率直な意見が次々と述べられる。
丁度基地に入った辺りからクランプが吹っ掛けて、あの状態なのだ。
嫌でも気になってしまう。
しかしそれはアチーヴだけでなく、元々ヴィビッツにいる者達だって同じ事で……


「また始まったの?相変わらず短気な奴らね」

突然の声に振り向くと、ミカルゲが呆れたように争いを見ている。
まるで自分は関係ないとでもいいたげな人事の様子だ。

「エト……止めてくれると嬉しいけど」
「あら、それは私の仕事ではないわ。あなたも分かっているでしょう?」

ユエが期待せず問うとエト、ことエトヴァスはやはり期待に沿わずにまたその模様を眺め始める。
すると一番最初に猫たちを迎え入れたワタッコ・ライミィが無防備に喧嘩のど真ん中に割ってはいる。

「もうねぇ、喧嘩はねぇ、終わりなんだよ~?お客さんがねぇ、いるのにねぇ、見っとも無いよ~?」
「……ッキャハハ♪見っとも無いだって~」

ライミィの言葉がツボに入ったのか、甲高い笑いが響く。
皆が振り返ると、可愛らしいアブソルが必死に笑いをこらえている。

「けど~確かにどっちもどっちだよね~。スノウリンは大人気ないし~クランプは自分から騒ぎ起こして迷惑だしさ~♪」
「なっ……」
「おいフォイリヒ、てめぇは引っ込んでろって!!」

クランプがそういい投げるとおっと失礼~、と、彼はトコトコ二人に歩み寄っていく。
今だ笑いを堪えるようにしたまま、スッと二人に少しのお金を差し出す。

「二人でお客様に何か買ってきてあげれば~?……ああ、喧嘩が大事でそれも無理かな~?」

まるで試すような口振りのそれは、いかにもサドのアレと同じである。
しかしスノウリンとクランプは「喧嘩が大事」などと言われて黙っていられるはずも無く。

「喧嘩が大事だと……?そんなのあるわけ無いだろ?」
「あったりめぇだ!!行ってきてやろーじゃねぇか」

二人睨み合うようにするとアブソルから引っ手繰るように小銭を受け取り、やはり睨みあったまま基地を出て行った。

「行ってらっしゃい~」

ライミィが手を振る。


これも普段どおりなのだろう、ヴィビッツの一員は平然としている。
喧嘩はこれでなくなったものの、アチーヴ一同何を言っていいのか分からない。


「フフフ~♪見事にパシられてんの~。あ、フォイはフォイリヒね~宜しくアチーヴ一同様~♪」

アブソル・フォイリヒは一礼するとそのまま自分の部屋へと消えていく。
それを見てエトヴァスが呆れたように目を伏せる。


「あ、あのさぁ……」
「これもいつものことだよ!気にしないでね!」

笑顔でコリルに返されるも、猫は気にしないことは無理だろうとすぐ思う。
こんな中で毎日過ごしていると感覚もおかしくなるんだろうなと思う。

「……それで、フォニアは?」
「あ、そうやったね……どうしたんあの子は?」

クサリの問いに猫が乗る。
クサリはあのまま能力を発動しっぱなしなので、負担が無くとも気にはなっていたのだろう。
シープもあれから見当たらず、二人でどこかに行ったかもしれないとも考えられる。

けれどラナがあっ!!と、いきなり声を上げる。

「ヴィビッツって十匹いるんだよね?だったら、あと一匹足りないじゃん!!」

そういってピョンピョン跳ねて声を張る。
そういえばそうだった、と皆も頭の中で数えて見る。
確かに九……一つ足らない。

「テイルのことだね……フォニアに何か白状させるなら、テイルしかいないから」
「テイルって?」

ユエが言った事に答えを待つと、ギイィ、とある部屋のドアが開く。


ヘルガーはアチーヴの皆を一度見、興味が無いように部屋を出てきた。

「……テイル、どうだった?」
「……カクレオンの店の泥棒は認めた、けど……ドロボーウサギは事件とは関係ないようだった」

彼はそれだけ呟いて基地を出て行こうとする。
すかさず猫が止めようとする。

「な、なぁ……テイル、やっけ?それってどういう?」
「……」

しかし彼は何も聞こえなかったかのように足を止めることは無く。
猫はそれに不満を抱きつつ更に大きな声で、

「黙ってたら何あったかわからんやん?そやからちゃんと……」
「猫……そこまでにしておいたいたほうが……」
「え?何で――ってええぇえうわわわッ!?」

ユエが止めたのも虚しく、瞬間火炎放射が猫の頬を掠る。


他の皆が確認してみると、猫の後ろの壁は見事に真っ黒に焦げプスプス煙を上げている。

(な、なんかつい最近にも似たようなことがあった気が……)

「…………」

おそらく、っていうか絶対火炎放射を放ったのはテイルなのだが、猫はどうも文句が言えない。
ブライの時と違って真っ黒な――いわゆるどす黒の怒りのオーラがはっきりと目に見える。

――テイルから。

「黙れ……邪魔だから……」

ある意味怒声よりも恐ろしいその呟きを残し、テイルは何も言わず去っていく。
猫も本当に何も言えない。

――おそらくクランプが言っていた『あれ』とはテイルのことだろう。
今の猫にはフォニアの拒否の理由がよーく分かる。


「……ごめん……あの、これ……いつものことだから」

ユエがそうまとめ、大きな溜息をついた。

「……それはいいが……あいつ、事件に関係ない、と言っていたな?」

今だ身が縮んでいる猫に代わり、クサリが尋ねる。
たしかにテイルはそんなことを呟いていた……と言う事は、例の事件の犯人は別にいる、と言う事だ。

「そうだね……フォニアじゃ無かったら……誰だろ……」
「……もう日も暮れるだろう。私たちは戻るが、盗まれたものの始末はどうすればいい?」
「それは私たちがやっておくよ……君達は事件の方、頼むね……」
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