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小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
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「あーあぁ・・・めんどっちぃ」

午後の陽気な空気の中、フェデラルが漏らした声。
本業であるレブル買い物係として、屋敷がある森を越えて遥々、この多く店が立ち並ぶ商店街へと来たのだ。
凛鈴から受け取ったメモに連ねられた食材の名称の数々が、帰りの荷物の重さを安易に想像させてくれる。
実際、八割の買い物を済ました今の状態――両手に荷物、というのが答えだ。
一応仕事なので了解しているが、つくづく面倒臭い係りの担当になってしまったことを思わされる。
「で、後はなんだこれ・・・薬だな」
メモの端っこに小さく書き記された文字と睨めっこの末、最後に立ち寄る場所が薬品店だと判明する。
今いる場所を右に直進して、装飾品店の向かいにあったはずだ。
たまに装飾品などを見ると悪戯気分で盗んでしまいそうにもなるが、実際そんなことをやった覚えは一度もない。
盗みが許されるのはダンジョンのカクレオン相手くらい・・・まぁ、それも悪いことに変わりはないのだが。
そう考えながら、右に直進、例の装飾品店が見えてきた辺りでだった。
「あん・・・?」
その、装飾品店の前で、妙に辺りをうかがうようにキョロキョロしている少女が目に止まる。
普通なら気にしないのがフェデラルだが、その少女のそぶりはいかにも、フェデラルから見てみれば怪しいそのもの。
更に近づいてやっと、彼は少女の姿を確かに確認できた。
「・・・おいお前・・・フォニアか?」
恐る恐る…と言うほどではないが、多少の躊躇いを交えてその名を出した。
フォニア、と呼ばれた方は一瞬びくんと目に見える驚きを表したかと思うと、
「え?何・・・げっ!?フェデラル!!な、なんでこんな所にアンタがいんのよっ!?」
振り向きフェデラルの姿を確認すると――驚愕した。


――――――――――――――――――――
■フェデラル(オオタチ♂)
■フォニア(ミミロップ♀)

いい加減更新止まっていたので前に書いて行き詰まったやつ。続き書ければ良いな…!
去年の6月28日に書いたのが最後なようでした。
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ここに足を踏み入れる者を直に見るのは初めてだった。

私たちは、外から来る奴らから見れば“珍しい”。



普段は人目につかない、滝の上流の、ねじ曲がってごつごつと岩肌が尖る場所の奥の奥に身を潜めていたから、誰もそんな場所を探索しようなどとは思わなかったんだろう。
いかにも人は通りたがらないような場所。
私たちはそこで暮らしていた。
――崖の下?

――……多分、落ちたんだろうね。気絶してたし。

――でも待てよ、じゃあその血は何さ? 落ちただけでそこまで……アンタをべったべたにするくらい出血するものかい?

――……打ち身と骨折以外の怪我はない……。

――は?



――血は……あの子のものじゃなかったよ……。



ふと、立ち止まって見上げる。
今日の夜空はいつもと少し違う気がした。
この時期になると、天には星の川――いわゆる天の川が現れている。
寒い季節に比べ、より一層煌めきを増したかのような星の群れに見える。
今日はその光がさらに輝いたかのような、きらびやかな空だった。


「今日は七夕やでな~」

暗闇の中の光の粒に目を凝らしていた私に、側からそんな声が掛けられる。

「七夕?」

少し後ろに視線を移せば、頭の後ろで手を組む猫の姿。
私が見上げていたのを認めた上での発言だろう。
私に並ぶと猫は、私の尋ねたのを聞いた上で、瞳に映るものを私から上えと変えた。

「やってこんなキレーなんやで?俺も忘れとったけど、見たらすぐ思い出したわ」

笑いを含み答えたそれにつられ、私も再びあちらへと注目を戻す。
広がるのは闇だけで、そこに彼らはさっきと何ら変わり無く存在していた。
ただ、少し間を開けて見たそれは、猫の言葉に暗示されたのか、特別な光に感じられる。
七夕と思うだけでそう感じるのは錯覚だが、しかしその錯覚があってこそのこの星空なのだろう。

「……面白いものだな」
「んー、何が?」

猫の耳は確実にその呟きをとらえる。
横目で見れば、猫は顔を上に向けたまま。
私もそれに揃えることにし、限りない星の中へ視線を向けた。

「この世界とお前がいた世界……違う筈なのに、七夕などというものは共通しているだろう?」

そう質問を投げ掛けるも、猫は視線をあちらから戻そうとはしない。
余程星に惹かれていたのだろうか。
どちらにしろ耳だけはこちらに傾けていたようで、

「あー確かにそや!」

と、言う。

「タンゴ君にこっちの七夕の話も聞いてんけど、話まで一緒ってなぁ」
「……お前、そんな事を聞いていたのか」
「俺やて気になったら聞くでぇ?にしても酷いわぁ」
「?」

驚いたという私にそんな返事をすると、猫は記憶の中からその物語を引っ張り出す。
何の事かと待ってみると、言葉はすぐに続きに進む。

「やって、2人ともお互いが好きで一緒におっただけやのに、仕事せんかったからってずっーと離されっぱなしなんやで?」

2人、というのは織姫と彦星だろう。
促されて私も記憶を漁ってみるが、どうもこの言い方では猫が何か勘違いしているように聞こえる。

「離されて続けているわけではないだろう。七夕が年に一度会える日なのだから」
「ちゃうて!」

猫は私の言葉を否定する。
その感じからして、七夕の話は本当に正確に理解しているようだった。
なら何が違うのか。

「年に一度やろ?2人とも離されて改心しとる筈やで?けどいつまでたったって年に一度しか会わせてもらえやんのやで?それってむっちゃ悲しいやん」

疑問を口に出そうとする手前、猫が先に答えを出した。
ああ、そのことか。
猫にしては珍しく考えているということにも若干の驚きを得たが、その言葉には確かに共感できる分があった。
まあしかし、そう考えてしまうと七夕も何もなくなってしまう。

「お前……あまり気にしてはいけない。それに、話としては私たちを基準にしているが、実際星にとっての一年など私たちにとっての一日二日くらいなのだろう?」
「あ、それもそやな……」

そこで多少あやふやな納得の言葉が漏れる。
やはり先の猫の意見は曲げられないものの、そこで思わず考えさせられたらしい。

「……まあいい。他のやつらのことだ、また七夕がどうだと騒いでいるだろう……遅れるとうるさいからな」

そこで一区切りとして、私は目の前の光景を夜道に変更する。
掛けた言葉の意味が帰りを促したものだとは、猫には簡単にわかっただろう。
長い付き合いなのだから、多少省略しても伝わるものだ。
だから、この後返ってくる言葉も予想がついていた。

「クサリはさあ」

しかし、しばらくの間――私は先に二、三歩を進めていた――の後発せられたそれは予想を裏切る問いかけで。

「……何だ?」

私は振り返る。
そこにいた猫はようやく、その目をこちらに向けていた。
暗闇からまっすぐに見える眼差しのままで、また幾秒、時が流れた後に、

「クサリやったら、そーゆう風に会えんかったらどう思うん?」

猫は一度天を仰ぐ。
視線の先に見えたのは、闇の果てでひときわ輝く2つの星。
ああ、織姫と彦星の話か。
そうやって理解するうちに猫の視線の先はまた私へと定まる。
その目は相変わらずのそれであって。
私は特に頭をひねることもなく口を開く。

「さあな……生憎、私には好きな奴などがいないからな。聞かれても答えられない」

それだけだ。
私は率直に述べ、今一度歩を戻そうと踵を返す。

「……じゃあ」

ただ猫の言葉はまだ続いた。
さすがにこれ以上あちらに合わせ続けていたら、いつになったら帰れるかも分からなくなりそうだ。
本来なら極力避けるところだが、仕方なく、今はもう振り返らないことにした。

「何だ?」

耳だけはしっかりと猫に傾けた。
瞳に映すのは暗がりにぼんやり浮かぶ土の道。
心にもまた、ぼんやりと浮かんでゆくそんな事を、自分でも考えているのかどうかわからない。
やがてそんな中に、猫が続きを運びこむ。


「変わりにや、俺と会えんかったら、どない思う?」

私はそこで振り返る。
何度も予想しない発言ばかりしてくれる猫だが、やはり闇の向こうの彼は、いつもの猫で。
ゆったりとした笑みを浮かべて、今までと同じように答えを求める。

「……」

答えが、自分の考えていることが、分からない。
普段ならあっさりと探り当てられるのに、私の中にこれに該当するものが見当たらなかった。
どういうことだか、理解できない。


「……考えたくもないな」


私は、どう思っているのだろう。



「お前といると退屈しないのだからな」




――――――――――――――――――――――――
■クサリ(グラエナ♀)
■猫/ビョウ(エネコロロ♂)

今年もアチーヴで七夕ネタ。
この二人は私的にもお気に入りの組み合わせだったり。
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