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小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
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(昔書いたものを誤字だけ直したものです)

深い暗闇から舞戻った者……
夢から覚めた彼女はゆっくりと目を開けた。
背にしていた芝生から起き上がるとふぁ……、と欠伸を一つ右手の平で抑えると、空を見上げる。
薄赤に染まった空と連なった山脈から半分だけ頭を出した夕日──
「もう……夕暮れか……」
グラエナは目を擦り呟いた。


1話 夕闇の森で


「少し昼寝しすぎたな……早く戻らなければ……」
グラエナはそう言いながら森の中の土の一本道を進んでいた。
蜘蛛の巣のように広がった木々の枝の隙間から暖かな赤い光がこぼれてきていた。
「最近は暖かいから……今週で何度目だろうか」
そう呟くとまた一つ欠伸をかみ殺す。
「そういえば……夢でも見たな……」
ふと、それが引き金になったかのように思い出す。

『──ちりん……』

詳しくはもう忘れてしまったが、今でもはっきりと耳の奥のほうに焼きついている。
錆びれた鈴の透き通った旋律。
淋しそうに木霊した音色。
それでもその音が彼女にはとても心地よく聞こえていた気もした。
「久々だな……夢など見たのは」
そう言って鼻で小さく笑う。

気づくと枝の隙間から伸びていた光の筋が少し弱くなってきていた。
「日がさらに沈んだな……急がなければ」
そう言って足を速めて進みだしたときだった。

──ちりん……

「?……今のは……」
辺りを見渡すが何もかわった物は無い。
よっぽど耳に残ってしまったんだろうか、と気にせず進もうとするが
──ちりん……ちりん……
「また、だ」
今度は連続で
さすがにこれは空耳ではないだろう、とグラエナは耳を澄ませた。

──ちりん……

「こっちか……」
そういって彼女は自分の右側を横目でちらと見る。
そこは今いる一本道とは違い少しも整備がされておらず木々の間に長い草が伸びたい放題に生えていた。
その向こうのほうからあの音色はこだましている。
「時間がないが……まあ、いいだろう」
そう言うとグラエナは茂みの中に足を踏み入れた。
2m位にまで伸びた草の中にグラエナは消える。
その中で彼女は耳をいっそう澄ませる。
風がそよぐたびに草同士が騒ぐため少々聞き取りにくかったが。

──ちりん……

「あっちか……」
正確に位置を探り出すとその方向に向かって草の道を少し足早に進み始めた。
進むたび長い草がザワザワ話し出す。
それに紛れて錆びた音が途切れ途切れに、しかし確実に大きくなって聞こえてきた。
しばらくして一歩踏み出すと鬱陶しい草の林が終わった。
「ここは……」
代わりに視界にはまるで森にぽっかり丸い穴が開いたような場所が広がっていた。
その中心には10mはあるであろう高さの樹が大きく枝を広げていた。
緑の葉を茂らせたその樹の方からあの音色が聞こえてきた。

──ちりん……

丁度上のほう、その樹の中では一番上にある一本だけ太く伸びている焦げ茶色の枝の上からだ。
その上で何事も無く眠っているエネコロロの首に金色の鈴が鈍く光っていた。
風が吹くたびに錆びた音色が奏でられる。
「あいつだな……」
彼女はそういうとその枝の真下に移動する。
そこまで行くと大きめの声で呼びかけた。
「おい、もう夜だ。そんな場所で寝ていたら風邪でも引くぞ?」
そう言ってエネコロロの様子を確認する。
さっきのように瞳は閉じている。
「……起きない、か……」
グラエナは呆れたように溜息をついた。
空を見上げると少し青みがかかっていることが確認できた。
かすかに小さな星が輝いている。
「急がなければもう夜に……」

困ったようにそう呟いた時、

薄っすらと、エネコロロが瞳を開けた。



─────────────────
アチーヴは昔書いたものを基にして修正したものを出しているのですけども、
昔書いた分をそのまま消してしまうのは何だかもったいない気がしたので(苦笑
誤字とかだけ修正して原文も置かせてもらおうかなあと…!
昔と今とで書き方もだいぶ違ってきてて比べてみるとおーってなりますね!笑
もしかしたらそのうち引っ込めるかもしれませんのでご了承くださいませね。
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