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小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
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(昔書いたものを少しだけ修正したものです)


「ふわぁあ~……何なんさっきから俺ん事呼んで……」
エネコロロはそう呟くと大きく欠伸する。
そして眠たそうな目で視線を緑の大地へと落とした。
「あいつか?俺ん事呼んどったんは……?」
薄闇の空に視線を注いでいるグラエナを見つけた彼の首元で金色の鈴が揺れていた。


2話 危険な夜闇の森


「どちらにしろこの時間ではもう手遅れか……」
グラエナはまだエネコロロが起きた事に気づいてない。
暗く変わりつつある空を見て何かを呟いている。
「なあ?さっき俺を呼んでたんってアンタ?」
そこに唐突に降ってきた気楽そうな声。
彼女はその声の元を瞬時に探り当て、あの枝を見上げた。
予想通り──例のエネコロロがこちらを見下げていた。
「なんか用でもあるん?あんのなら聞くで?」
そう言ってエネコロロはまた一つ欠伸する。
それを見た彼女は少々呆れながら呼びかけた。
「とりあえずそこから降りろ。時間がかかるだろう?」
自分とエネコロロのいる枝とは10mもの高さの間隔がある。
まずこの樹にはその枝以外の枝は見当たらないしそのほかに足場に出来るような物だって見当たらない。

──一体どうやってあんな場所に上ったんだ……?

「はいよ……降りたらええんやろ?」
彼は気楽に返事をするがどうやって降りるつもりなのか、などと彼女が考えていた時だった。
「っしょっと!」
何を考えているのかエネコロロはそこから普通に飛び降りた。
もう一度言うが10mはあるであろう高さから。
骨折はおろか下手をすれば死んでも可笑しくない高さから。
「っな……!?」
驚いたグラエナを知ってか知らずか。

スタッ

同時にあの鈴の音が優しく鳴る。
「あーあ、眠い眠い……で、何の用なんや?」
エネコロロはグラエナの1mぐらいの近さの場所に見事着地した。
怪我はおろか気楽なままこちらに話しかけてくるほどだった。
「……とにかくこの森を抜けるぞ!話はその後だ!」
色々と聞きたいことはあったがとにかく今はここから離れる事が第一だった。
少し動揺したがグラエナはそう言った。
何のことか分かっていないのかエネコロロは。
「は?……いやそんくらいいいやないの」
と疑問符を浮かべながら少々眠たそうにニィッと笑う。

コイツは分かっていない、夜のこの森は……──

頭の中でそう呟いていたのとほぼ同時、
自分の後ろの方で何かが空を裂いて放たれた感じ……
「シャドーボール!!」
彼女は即座にそれに反応し、暗闇の塊を放った。
放ったその先で同じ暗闇の塊が衝突し爆音を立てる。
その衝撃で少しばかり土煙が舞う。
「もう現れ始めたか……厄介な……」
「お、おい何なんや!?いきなりなんか飛んで来るわアンタも何か飛ばすわ……」
今の爆音で目が覚めたのか、エネコロロは驚いて尋ねる。
「話は後といったが……前言撤回だ……」
グラエナはそう静に言って自分が放ったのと同じものが飛んできた方を睨みつける。
土煙が消え始めた先には森が広がっていて、グラエナがここに来るときに通ってきた雑草の林がある。
その暗闇からスゥっと、次々に何かが現れた。
「ここは『幽霊の森』と呼ばれていて……夜はゴース達で溢れかえる!!」
彼女はそう言って再びシャドボールの力を溜め始める。
「なんかよう分からんけど……ピンチっつー事?」
この状況を察してエネコロロも彼女の後ろで構える。
二人の周りはもう何十匹ものゴースで取り囲まれていた。
楽しそうにケラケラ笑うゴースたちには同じようにシャドーボールの準備を始めるものもいた。
「まあ、そうなるな……お前、戦えるのか?」
ゴースの群れがゆらゆらとこちらに近づいてくる。
「はは、俺を舐めんなって。こう見えてもやるときゃやるさかい心配いらへん」
彼はそう小さく笑う。
それを聞いてグラエナも微笑した。
「ならいいな……私はクサリだ……お前の名は?」
「名前なぁ……猫とでも言っとくか!」
「猫か……とりあえずここを抜けるぞ!」
それを合図にクサリは溜めたシャドーボールを放つ
それを避けるゴースややられたゴースたちで狭いが道が少し開ける。
「ああ、任せとけや!」
そのわずかな道を二人は一瞬で駆け抜け、一瞬のうちに草の迷路へと消えた。

あとには錆び付いた音色だけが響き残り、残ったゴースたちはゆらゆらとそのあとを追いかけた。
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