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小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
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(昔書いたものを少しだけ修正したものです)

まだ朝も早いトレジャータウンには、それでももう賑やかな声が広がっていた。
猫とクサリは途中、そこに立ち寄っていた。
アチーヴ基地から海岸の洞窟に向かうにはこのトレジャータウンを通るのが一番近いからでもあった。

「……で、後はここで何か買ったりする事ができる。」
立ち寄るついでに街の施設について説明しながら目的地へと向かう。
「へえ~買い物なぁー。俺はそんなことやったこともないでなぁ……」
「……買い物もやったことないのか?」
その発言を耳にして、クサリは分かりにくい溜息をつく。
今までの物言いを整理すると、まずこの猫はポケモンではなく、かといって人間というわけでもない。とりあえずネコ。
人間だったとしてもここまで常識が通らないやつはいないだろう。
つくづくネコというのは不便だな……などとクサリは少しばかり頭の中で考えていた。
「まあええやないの♪その内慣れる慣れる♪」
そんなクサリの様子を知ってかしらずか、猫はまた気楽そうな言葉をサラッと言いクサリよりも速めの歩調で進みだす。

──と、

ドン、と、誰かとぶつかった。猫にそんな感覚がする。

「あっ……ご、ごめんなさい!オイラついつい急いでて……」
こちらが謝るよりも先、ぶつかった相手だろうタマザラシが少し焦ったように頭を下げる。
その状態のまま、クサリのあれとは違う深い溜息をつく。
「ええよええよ、気にせんといて。それより、アンタなんかあったん?溜息なんかついて?」
さすがにそれは猫にも聞こえたのか、下げた顔を覗き込むような形で尋ねる。頭あげてええから、と軽く気遣うように言いながら。
猫のそれに影響され、タマザラシは少し戸惑いながらもゆっくりと顔を上げ
「じ、実は――」
おどおどとしたそれとともに、また一つ深い溜息をついた。


5話 誘拐事件


「……そういえば、スノウリン……?」
「ん?」

あれから少しして、アチーヴ基地を去った二人はまだゆっくりと自分たちの基地へと戻っている最中だった。
何を思ったのかユエがふと、スノウリンに声を掛ける。
「あの二人に渡した依頼選んだの……コリルだった……よね?」
その質問を何故か恐る恐る、といった感じに投げかける。
確かユエの覚えている限りでは昨日、コリルが依頼を選んでおくとかどうとか言っていた気がする。
だからさほど心配する事でもなく、ただ単に聞いてみただけ、だった。

──が、

「あーあれ?コリルが選んでたけどさ、何かあんまり面白そうな依頼じゃなかったから俺が選びなおしておいたぜ?」
ピタリ。それまで進んでいたユエの足がそれを聞いて止まる。
「……今、何て言った……?」
一番あってはいけないパターンに、聞き取れていながらも自然と聞き返してしまう。だからさ、とスノウリンも足を止め何も気にせず言い直す。
「ランクDの落し物拾いに行くのとか面白くもなんともないだろ?だからお尋ね者にしておいたけど。」
「……ランクは?」
少し怒りに満ちた声だったが彼には聞こえなかったらしく、何か言ったか?と聞きなおす。
「ランク!高すぎるの選んでないよね……!?」
「あー確かそんなに高くもなかった。A……だったか?ま、あんなの簡単だしさ!」
そう言ってスノウリンは歩き出す。その様子から何の悪気も感じ取れない。
「……大丈夫、だといいけど……あの二人」


「──幼馴染が帰ってこない?」
「はい……です……」
クサリが確認するとタマザラシは小さく返事を返す。
丁度今はこのタマザラシも一緒に海岸の洞窟に向かっている途中であった。
「昨日の夕方知らないポケモンさんについて行っちゃって、朝になっても戻ってこないから……」
そう言い、心配そうに俯く。
「そのポケモンの種族は分かるか?」
「確か、ボスゴドラ……です……」
「ボスゴドラってこれの事ちゃうん?ほら!」
それまで例の依頼の紙をずっと見ていた猫が口を出す。
クサリに渡されて、勝手に封筒を破って見ていたのだった
猫に手招きされ、クサリとタマザラシもその一枚の紙を覗き込む


~最近子供が誘拐される事件多発、皆無事に保護されているものの持ち物を奪われるなどの被害が相次いでいます。
また被害者の証言から犯人はボスゴドラと判明し、海岸の洞窟を拠点にしている事が判明。
探検隊の方からも逮捕にご協力下さい。

場所・海岸の洞窟 ランク・A~


「……ランク、A?」
何よりも先にそう首をかしげたのはクサリ。
確かユエは『簡単なのを選んでおいた』と言っていたはず
しかし現実はあっさりとスノウリンの計画性のなさにぶち壊されました
だが今ここにいる皆はそんなことなど全く知らない。
ましてや探検隊になど全く興味のなかったクサリは勿論、猫もこのタマザラシも知るわけがない。
だからこれは簡単なもの、と勝手な解釈を行ってしまう。
「じゃ、じゃあ昨日のボスゴドラはこの誘拐犯ってことですか!?」
「うん~そうなるんちゃうかな?」
タマザラシはさらに慌るが猫がそれを落ち着かせる。が、そんなもので落ち着くような事ではない。
「とにかく速う海岸の洞窟に行ってみよか!ひょっとしたらアンタの友達も居るかもしれんし」
「うう……そうですね。無事だといいんですけど……」
とりあえずそこに行ってみないとこのタマザラシの幼馴染もいるかどうかさえ分からない。それは猫にも分かっているのだろう。
「そーそー!じゃあクサリ急ごか!……そういえばアンタの名前聞き忘れてたね、何て言うん?」
「あ、オイラはタンゴって言うんです」
「タンゴ君ね♪んじゃ急ごに、友達が心配や!」
そう猫は持ち前の明るさで励まし、少し早足で海岸の洞窟へと向かった。
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