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小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
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(昔書いたものを少しだけ修正したものです)

あれから随分走っただろう、走るたびに鈴が振動する。
あの草の迷路も越え、今はクサリが1番最初にいた土の一本道に出ていた。
あの時は木々の間から日の光が漏れていたが、今はそのようなものは一つも見当たらず静かで少し不気味な木の葉の囁きだけが聞こえる。
とりあえずはクサリが住んでいるとレジャータウンの近くに出るために、土の道を進む。
そして後ろからゴース達が追いかけてきていないことを確認してクサリは疑問を投げかけた。


3話 とある勘違い


「猫……だったな。それでお前は一体何をしていたんだ?」
「んー俺?そやなぁ……何か知らんうちにあそこにおったんよ、そんなけ。で、さっきの黒くて浮いとったんはなんなん?」
しかし当の猫はきっぱりと言い切るとさらに質問を投げ返してきた。
クサリはそんなことも知らなかったのか、と呆れながら答えを返す。
「ゴースも知らんのかお前は……」
「そりゃここに来たんやって始めてやしあんなんやって初めて見たんやで?」
「お前……もしかして元々は人間だったのか?」
ふと思い、クサリはそう口に出してみた。

知らないうちに知らない場所にいた、ポケモンの名前すら知らない──元人間はたいてい同じような事を言っているのを噂で聞いたことがある。
なら、この猫もその一人なのでは。

「ちゃうて!俺が人間?大体俺見て人間に見え──?……ん?」
しかし彼はそれを否定し、同時に自分の姿を見てようやく何かに気づいたか、そのようなそぶりを見せ、
「あれ?……何か似とるけどちゃうんやけど……?」
そうクサリを見て小言のように呟く、むしろ尋ねる。
「……じゃあお前は何だというんだ?」
尋ねたいのはこちらなのにこの猫は自分の状態すら把握できていなかったよう。
えっとなぁ。などと呟き口を開く
「ネコっつーたら分かるか?今の俺と似てんやけど……」
「……詳しくは知らないなそのようなものは……とりあえずお前はポケモンではない、と」
「やからポケモンは何やっつーの?」
猫はあくまでホントに分からないから本気だ。
しかしクサリにとってはポケモンの説明など呆れる以外に何も無く……というよりどうポケモンを説明すれば良いのか。

──と

「……追いかけて来たか……」
クサリはいち早くそれに気づきシャドーボールの構えをとる。
猫は一瞬何のことか分からないようだったがすぐ思い出したようだ。
「えぇ……もう追いついてきたん!?」
そういったと同時に近くの茂みからゆらゆらとゴース達が姿を出し始める。
次々現れるその数は大体15匹前後。
「あーもう!何なんやこいつら!なんでそんなすぐに見つけれるんや!?」
実際のところ猫の鈴の音を頼りにやってくるのはすっごく簡単で。
そのうち一斉にこちらに向かって勢いよくつっこみ始めた。

──と思われた

「……?」
「へ?何なん……俺ら無視?」
ゴースの群れは二人などカンペキに無視して通り過ぎていく。
猫にはすれ違い際に少し疲れきっているゴースが何匹か見えた気もした。

「な、何かあったんあれ……?」
猫が聞くとクサリも首を傾げる……そしてまたそれと同時の事だった。

「あ、ねえねえ君たち!ここをゴースが通り過ぎていかなかった?」
突然の声の方向に振り向くと丁度ゴース達が出て来たのと同じ茂みから、まだ幼そうなライチュウがにこっとこちらに歩み寄って来ていた。
「?……ゴースならあれだが……」
いきなりの事に少し戸惑いながらだがクサリは少し向こうに見えるお化けの塊を指差した。
それを見、ライチュウは明るく微笑んだ。
「ありがとう♪この森夜は危険らしいから早く帰ったほうが良いよ!」
ライチュウはそう礼を言ったのちゴースのほうへと駆けて行く。
「それはお前のほうこそ……」
「10万ボルト!!」
クサリの声が聞こえたかどうかは分からないがライチュウはゴースの群れに10万ボルト……どちらかと言えば雷を放つ。
当然、そんなものを喰らってしまったゴース達はやられて落っこちる。
地面は焦げた丸い塊でいっぱいに。
ゴース達はきっとライチュウから逃げていたんだろう。

「ふぅ……今日の仕事もやっと終わりー♪」
「……おい」
今度はちゃんとクサリの声が聞こえたようで、振り返ってどうしたの?と怪訝そうに首を傾げる。
「ここが危険な場所だと知っていて……それなのになぜお前はこんなところにいるんだ?」
「あ、僕探検隊なんだ!それで今日の依頼の帰りにここのパトロールみたいなの頼まれてて……」
ライチュウはにっこり笑って答える。
パトロールの割には一方的に蹴散らしていたようにも見えるが、
「探検隊ねぇ……面白そうやぁないの♪」
「でしょでしょ!?チームの皆もおもしろいし楽しいよ探検隊!」
猫がそう呟いたのが聞こえたのか、ライチュウは彼のほうに向き直ると嬉しそうに話し出す。
初対面のはずなのに猫も馴染んでいる。

「そやねぇ……俺もやってみたいわそんなの~♪」
「え?君探検隊やりたいの?」
猫の御気楽発言にライチュウは凄く反応し、顔がさらに明るくなる。
「それじゃあ探検隊の登録してこようよ!早いほうがいいでしょ?」
「そんないきなり……しかもこんな時間に行くのは」
クサリもこれには少しばかり止めに入ろうとするが、
「あ、そっか!君も一緒なんだね!二人一緒でも全然大丈夫だしギルドは夜でも歓迎してくれるよ♪」
「は……?」
ライチュウはテンション上がってとてつもない勘違いをする。
「あ、そうやったんクサリもやりたかったんなら早う言うてくれたらよかったやんか♪」
猫がそう楽しそうに言うとライチュウは続ける。

「じゃあ、ギルドまで僕が案内するよ!僕はコリルって言うんだ!よろしくね♪」

そう言いコリルは薄暗いこの森に果てしなく似合わない笑顔を向けた。
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