「オレ、今日で探検隊抜けるわ」

「……え？」
「ちょ、ヴェリエル？な、何言って」
「さっさと抜けるといいのだ。オマエ邪道なのだ、アーチェ様のご迷惑なのだ、抜けるといいのだ」
「ふ、風魔！ ぼ、僕は別に迷惑していないよ……！」
「……むぅ……」
「へーえ……迷惑なあー？」
「あっ、いや……風魔が言ってるだけだから、さ！ だ、だだから！ そんな抜けるとかいう冗談は……」
「いんや～冗談じゃねーぜ？ 本気本気」
「うっ……わ、笑ってそん言わないでよ！ ぼ、僕だって、いつもいつも騙されないんだからな……！？」
「あっはは、アーチェ君がそんな必死になるなんてなあ♪」
「だ……だから笑うなってば！」
「まさか、さぁ。ヴェリエル、本気で言ってるの？」
「え、き、祈叶？ な、何言ってるの？」
「だって知ってるでしょアーチェ？ 僕、アーチェの何倍もヴェリエルに騙されてるんだよ？ さすがにもう嘘も慣れたっていうか」
「なんか嫌そーな言い方じゃねーの」
「当たり前だよ」
「おいおい……」
「オマエ邪道すぎるのだ」
「いっいけませんよ風魔？ そんなすぐに乱暴奮っちゃ……！」
「むぅ……しかしアーチェ様」
「まぁ理由の一つはがきんちょがこんなだからかなあ～」
「オマエ今すぐ蹴り飛ばしてやるのだ」
「風魔！！」
「……、……むー」
「で、でも風魔のせいだとしても、それは大人気なさすぎるじゃない」
「しかたねえだろー？オレ大人気ないみたいだし」
「そんな……確かに依頼があっても基地でぐーたらしてたりするし、あと仕事もたまにサボるし、居留守したりもしてるしよく嘘もつくから大人気ないかもしれないけど……」
「……祈叶君さあ、もしかしてオレの事嫌いか？」
「嫌な時はあるかな」
「……ちょーっとグサッとくるじゃんかよ」
「っていうか、ホントに本気なの？」
「そ、そうだよ。どうせ今回もいつもみたいな上手い嘘で……」
「……はははっ♪ さっすがは祈叶君は鋭いなあ！ 単に騙されやすいだけじゃあねーみたいだな～これは」
「って、え、ええぇ、ほ、本気だったの……！？」
「はぁ……やっぱり嘘じゃなかったんだ……」
「まあなあ。しっかし、やっぱりいつも騙されてるやつはこうなるんだなあ～」
「そ、そりゃいつもだから大体分かるっていうか」

「ん、いやーそうゆー意味じゃなくて、な」

「騒がしいと思えば、何やってるんですか。そろそろ寝たらどうです？」
「む、ネレなのだ」
「ネ、ネレ！ ちょっとヴェリエルを説得してよ！」
「は……？ アーチェ、何故俺がこんなやつの説得など……てか、祈叶まで暗い顔して、どうかしたか？」
「ヴェリエルがさ」
「リゴレット抜けるって……」
「言ったのだ」
「まっ、そーいうわけだ♪」
「抜ける？ ああ。ま、抜けるなら俺はせいせいするんですがね」
「ウチもなのだ」
「も……もう！ ネレまでそんなこと言わなくても！」

「もっとも、それが真実ならの話だが」

「………………へ？」
「はぁ、まったく。そんなに祈叶とアーチェを騙して楽しいのか、あなたは」
「だって面白れーんだぜ？ こうなんか、嘘のつきがいがあるっての？」
「え、だから……ど、どういう……え、嘘？本当？」
「嘘でしょう」
「な、何でそう、聞いてもいないのにネレが確証もてるかな……」
「おや、アーチェはエイプリルフールもご存知なかったんですか？」
「え、えーぷ、りる？」
「4月1日。嘘をついても許される日、なのだ」
「てか、俺も今朝ベリから同じことを言われましたからね」
「ソッコーバレたけどな」
「俺が騙されるとでも？」
「期待してなかったから安心しな～。まあ期待通りここのお二人様は見事騙されてたけどよ」
「なっ……」
「ちなみに風魔君は実は最初から気付いてたんだよな～？」
「オマエいなくなるなら嘘も何も関係ないのだ」
「そ、そうだったの、風魔？ 言ってくれても良かったじゃないか……！」
「むぅ、失礼したのだ」
「あ、でも祈叶君にああも言われちゃあなあ……本当に出てこうかと思ったわ、ありゃ」
「ああ、今、エイプリルフールが終わりましたよ」
「マジか？うっわーもう少し騙してやりたかったんだけどなあ～」
「こんな夜中にやっているからです。……エイプリルフールは行事ですし見逃しましたが、今日からは嘘ついたなら普段通りぶち抜きますよ」
「わーったわーった、って。相変わらず恐ぇなぁネレリックは」
「知りません」
「ほ、ほら祈叶。嘘だったって……だからそろそろ顔上げて――」
「……また……」
「――え？」
「ん～？」

「――また……また、騙された……」