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小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
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(ただ、揺るぎない覚悟に機会を与えるべきだと思っただけよ)

ドン、と大きな衝撃が身体全体を襲った。
みぞおちに一発鋭い蹴りを喰らい、その激痛に追い撃ちをかけた。
腹の奥から臓器を吐き出しそうになるかと思わされる。それ程苦しい咳のようなものに襲われた。
気を失わなかったところは誉めるべきなのか、あるいは意識が飛べばこんな思いもせずにいられたのか……そもそも、こんな目に遭わなければ良かっただけなのか……。
だから面倒だと断ったのだ。
「……くぅッ……!」
ぼんやりと、彼はそんな事を考えていた。
痛みに麻痺した右手が、ぐわんぐわんと揺らいだ頭を支える。
そう考える余裕などないことくらい、例の音が証明してくれた。
カツン、カツン。という音にはっとなると、彼は慌てて目だけ――支えの右手が邪魔で、実際機能しているのは左目だけである――を休みなく働かせにかかる。
左手にあった銃が、無いのだ。それを探した。
先程のダメージでかすみ、ピントがずれたようにぶれる視界。
そう離れてもいない――身を乗りだし手を出せば中指くらいは触れられるだろう位置に、先程まで握っていた筈のそれを捉えた。壁に寄っている。
さっき壁に叩き付けられた時に落としたのだろう。容易く発想できた。
左手は必死にそれを取り戻そうとする。
「成す術無し、と言うところかしら」
そんな望みを絶つかのように音の主は口を開いた。
かかとの高いブーツの先が転がる銃に容赦なく落とされる。
先程自分はこれに蹴り飛ばされたかと考えるとゾッとした。
ガリ、と鳴る。銃は地面と無理やりに擦れ合うが、流石にその程度で破損する代物では無い。
そう分かってはいるものの、目の前で踏みにじられるのを見るのは不快なものだった。
伸ばした手を引き戻すと、ぐっと握った。
「……まだ……勝機は……」
やるせなく銃を見たあと左目は視点を上昇さる。そこに勝ち誇った少女の顔を捉えた。
うまく息が出来ずに言葉が出ない。
彼はただそれをギン、と睨む。
「あるとお思いで?」
彼女は彼に注意を向けた。いまだ銃から右足が退くこともない。
隙がない。と痛感した。
「……ここらで潮時とでも言うべきかしらねぇ。貴方にはがっかりよ」
彼女は彼とは正反対の方向に銃を蹴り払った。
地を滑りスピンする銃。摩擦が聞こえた。
先にあった壁に当たると軌道を曲げ、そこで速度を落とすと動かなくなった。
もう彼の手に届く範囲にそれは無い。
すると、途端に彼女は興味が無くなったように踵を返す。
カツン、カツンと軽い音が響いた。部屋に沈黙が訪れた。
「その程度の実力であたくしに意見できるとでも思って?聞いて呆れるわ」
鼻で笑う。
彼の反論は聞こえてこなかった。
反論出来るほど呼吸は楽ではないだろう。
痛手を負った彼に比べれば彼女はほぼ無傷であった。圧勝だったのだ。
力の差は見せ付けたのだから、これで周りの反対を押し切って自分の言葉の証明が出来る。
そう思うと自然に笑みが浮かんだ。
報告に行こう。
すっかり浮かれて部屋を出ようとした時、ふっとその歩みを止めた。
「?」
背後で何か動いた。
彼女はその気を逃さなかった。
まさかと思う。気配に気付き振り返ると、
「……俺はまだ動けます」
息は切れていた。その声も力強いとは言えない。
ふらふらとした頭から手を離すと、彼はもう一度しっかり床を踏んだ。
立ち上がった状況で彼女を睨む。
痛みをこらえる顔だったが、目の色は一番最初と何も変わらず同じままであった。
思わず彼女は目を見開く。
片腕を壁に押し付けた形で立っているところを見たあたり辛いはずだ。
とどめに蹴り飛ばした。
彼女は手を抜いたわけではなかった。
だから痛みで立てるようなものではないはずなのだ――そもそも意識がある事にも驚くことではあるが。
しかし彼は立ち上がった。
彼女の予想を裏切ったのが、彼女には驚愕である。
赤い瞳はただ一点、彼女だけを睨み続けた。
なんという気力であろうか。
「――あら、意外と負けず嫌いなこと。……けれど、負けず嫌いはあたくしも同じでねぇ」
しばらくそのままだったが、彼女が先に言葉を並べた。
静かな部屋にその声がこだまする。
先程の浮かれた気分を忘れ、また哀れんだ表情が覗く。
彼は何も答えず彼女をただ睨む。
まっすぐに睨んだ。
彼女は、何故彼が立つのかがわからない。
何故そんなにも睨むのかわからない。
辛ければあのままでいればよかったはずなのにと思う。
わざわざまた自分にやられるかもしれないことをするのが理解できなかった。
銃はまだ彼から遠い場所に転がっている。
彼がそれを取り戻そうも、彼女が防ぐことは簡単であった。負っているダメージを考えれば彼女のほうが圧倒的に有利だ。
そもそも彼にはもう勝ち目がない。
どう足掻こうと彼女が勝つことは見通せた。
なのに、
「……もう一度だけ、機会をあげようかしら。一週間待ってあげようじゃない。それまでに傷を治して腕を上げることね」
彼の覚悟の強さに、彼女は勝てないと悟った。
考えて分かった。自分が彼の立場なら、今思ったようにしていたのだろうと。
自分なら立てない。立ち上がれない。
彼は彼女の言葉に特に反応することはない。
呼吸が少し落ち着いていた。
「同情ですか」
彼はそれだけ訊いた。
彼女は問いに応じるようにそちらを向く。
数秒、間が置かれた。
「……いいえ。ただ――」ただ、興味がわいただけだ。



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■ネレリック(フワライド♂/探検隊リゴレット)
■デビッド(エアームド♀/探検隊リゴレット)

腐れ縁コンビで過去の話。
この頃のネレさんはまだ進化前でした。
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