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小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
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『なるべく早く、帰ってきてくださいねっ!』


ぼつぼつと雪が降る。
半ば凍り、半ば溶けた状態のそれは、雪よりも霙と呼ぶ方が正しいだろうか。
地面は泥濘、雨の時のあれと同じようなものであった。
違うのは降るものが雫でないことくらいだろうか。
霙は濡れた場所に積もることなどなく、白かったそれは地に触れたところから透明になり水に変わった。
足元の水溜まりが小さな飛沫を上げる。

街に仕事に出ていた帰りの事であった。
帰りとはいえ、朝早くからのことだったのでまだ日も落ちてはいない。
しかし空は曇り色で、太陽は天上に見当たらない。
暖かくなりつつある時期の昼間と言えど、このような天候である今日は凍える寒さである。
朝は雨など降りそうになかったのに、と思う。
ぼつぼつ、と冷たいものが顔に当たるたびに拭っていたが、それも最初だけ。
いつまでも終わりなく降るそれに、途中で無駄と判断して拭うのをやめていた。
彼はただ屋敷へ戻る足を進める。

「ねぇフェ君~?」
先を行くムースはおもむろに切り出す。
傘もささず、ゆるんだ地の上ではしゃいだ子供のようにくるくると回る彼。
無論その身はぼつぼつと濡れているが、彼にはそのようなこと気にならないのだろう。
「今日がぁ、何の日か知ってる~?」
特に返答がなかったことを認識していなかったのかどうなのか、ムースは構わず続きを話す。
口調は相変わらずふざけたようなそれである。
ムースの話し相手――ムースの後ろを、いくらか間を保って着いてきているフェデラルは機嫌が悪そうにムースを睨む。
フェデラルも傘などさしておらず、溶けかけの雪が降る中に身を晒している。
……彼はさしていない、というより、させないのだ。
「おいてめえムース」
「なあにぃ?」
「手ぶらなら傘くらいさせよ」
へらりと振り返るムースを見て、呆れと苛立ちを含んだ言葉でそう言うフェデラル。
フェデラルは自身が背負っている荷物をつい、と顎で示した。
その先には、荷物で大きく膨らんだバッグに無理矢理に挿された傘がひとつ。
フェデラルの両手は既に荷物で埋まり、これを使いたくても使えない。
彼がムースに言いたいのはそのことだ。
“荷物で手が塞がっている自分の変わりに、手ぶらのお前がこれをさせ”と。
「別にぃ、いいじゃん~?ぼくはこのままでえ、満足してるしぃ?」
しかしムースは彼の要求にわざと背く。
むっとなったフェデラルをすぐ確認し、クスリと笑みを浮かべて更に、
「っていうか~自分でさせばぁいいじゃんー」
フェ君ってば使いっぱしりもいいとこだよぉ。
ムースの目が愉快そうに細まったのをフェデラルは見逃さなかった。
「ってんめえッ!俺さまが両手に荷物なの分かりきって言ってんだろ!!」
勢いのまま噛み付いたフェデラルだが、こうなるとは読んでいたのだろうムースの左手はその口元が笑うのを押さえている。
「フェ君ってば~短気なのぉ」
「黙れ!!」
「その状態じゃあ~フェ君もこわくないしぃ」
ムースがにやりと笑った。気がする。
彼の顔は半分手で隠れていたが、発言からして笑っただろうとは予想できる。
歯向かいたい気は山々だが、ムースの的を射た発言に言葉に詰まった。
左手は凛鈴から頼まれた薬品の数々、右にはまた同じ人物から頼まれた食料品の数々。
背にも皆から頼まれた物が詰め込まれたバッグがあり。
――雨が降ったら、これ、使ってくださいね。
そのバッグには彼らが守る“主”から渡された傘が挿され。
万が一、ムースの挑発に乗って手をあげてしまい、うっかりこれらをひとつでも損傷してしまうことだけは絶対にならない。
欠けることなく全てを屋敷に持ち帰るのがフェデラルの仕事なのだ。
万が一、ムースの挑発的な態度に乗って何かひとつでも駄目にしてしまっては――
「あっ、足元気をつけてねぇ。そこ滑りやすいよ~」
そう考えていると、ムースが忠告した。
すぐ手前に、水溜まりが凍ったのだろう物がある。
イタズラばかりかと思いきや、必要あれば助けをするムース。
ただ単にふざけているわけではない。
それもあり、無駄に反抗することもできないのだ。
「チィッ……わーってら」
まだ不愉快な感情は強く残っていたが、今は抑えることにする。
(……とりあえず帰ったら殴る)
気のせいか、そう思うと耐えられる。
必要以上にムースに構うのは自分に合っていない。
なるべく視線は合わさないようにと、フェデラルは下を向いた。
そのほうが足元にも注意は行く。
先を行くムースの足跡を頼り、変わらぬ歩調で屋敷までの道を進む。
「……で、結局今日は何の日なんだよ」
それだけは訊いた。
一度降られてしまうと気になってしまう性分だ。
ムースはちらりと振り向いたが、すぐに顔を戻し黙々と前を行く。
「おい聞いてんのかてめえ」
一度こちらを向いたことを考えれば、明らかに聞こえなかったわけではないはずだ。
しばらく視線を留めていると、
「アハハ聞いてるよお。でもぉ……」
やれやれ、とわざとらしく肩をすくめるムース。
少しの間が置かれると、やはりふざけた調子を変えること無く答えるのだった。
「……やっぱり教えな~い♪」

――かわいそーなぁ昴嬢ぉ。


――――――――――――――――――――――――
■フェデラル(オオタチ♂)
■ムース(マリルリ♂)

気力が途切れて途中で終わってしまっt…
本当は続きがあるので書けたら書きたい。です。
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