小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
テーブルの中央、向かいに座る彼女とのちょうどあいだのところで、なだらかな山を成したクッキーが甘い香りで食するのを誘っていた。
僕はそれを一つつまんで口に運び、次いでティーポットに手を掛けた。
彼女を見てて、なんとなく僕も飲みたくなってしまっていた。
僕はそれを一つつまんで口に運び、次いでティーポットに手を掛けた。
彼女を見てて、なんとなく僕も飲みたくなってしまっていた。
ふと、以前の僕はまさかこんな仲になるとは考えてなかっただろうなと思う。
多分、彼女の愚痴を聞いていたからだ。
うちのリーダーと、彼女のチームの仲は良いものじゃなかったから。
もっとも僕自身は話を聞いていたくらいであまり関わりはなかったのだけれど。
結局、あれから和解したんだろうか。だといいけど。
「ジャッロ?」
陶器と陶器がカチャリと甲高い音を奏でたのにはっとなった。
目に入ったソーサー上に戻されたティーカップは、すべて飲み干されている。
向かいに座る彼女ーー男装に身を包んだカロッテが、いぶかしげにこちらを見ていた。
僕はポットに手を掛けたまま夢現だったようで、慌ててそれを持ち上げた。
しかし、自分のカップにはまだ並々残っていた。
手持無沙汰となったポットをそのまま置くのも惜しく思われ、それを彼女の空になった方へ向けてみる。
「おかわり、いる?」
「いや、今はいい」
「そっか」
結局卓上から浮かび上がらせただけで終わったそれを元の場所に戻して、特に意味もなく焼き菓子の山に手を伸ばした。
動揺して、そういえばさっき食べたばかりだったとか、僕は紅茶を飲みたかったとかいうことはすっかり頭から飛んでしまっていた。
思い出したのはそれを噛み砕いた時で、続いて僕はカップに手を掛けた。
「ほんと、ノティ様は何を考えてらっしゃるのか、わかったもんじゃないよ」
そう言いながら彼女はため息などしてみせるのを、残りの紅茶をすすりながら聞いた。
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