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小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
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「ファドラー」

……。

……、……。

……何だね、ファドラー。

「寝てた?」

やかましい。

「すみません」

それで、何の用だね。

「仮にだよ。僕が誰かを好きになったとしたら、ファドラーはどうする?」

許さないよ。

「だよね」

ファドラー、オマエ、もしや惚けるなんて馬鹿なことしてるのかね?

「違いますー、仮にって言ったじゃないですかー」

そうかい。

「っていうか惚けるとしても相手がいないでしょ。ファドラーだって僕が誰と会ってるかとか、僕が今なにをみてるかとか、全部わかるんだから知ってるでしょ?」

ジャローダの小娘らがいるではないか。

「ノティカさんは好きですけどそんなんじゃないしー。カロッテさんやヴェオノさんは面倒くさそうだし。あっ、今の内緒だよ」

ほう。

「あのー、ファドラーはそういうのなかったの?」

何が?

「だから、誰かを好きになったり、とか」

ワタシがそのような不要なものに興味を持つわけがなかろう。

「ですよねー。ってか、ファドラーみたいなのを好く御方の想像がつかないよね」

言ってくれるね。

「事実でーす」

そんなことにうつつを抜かしていられるのは、怠けている証拠だね。

「ふぅん」

なにか不満そうだね?

「ファドラーはそんなに働き者だったのかなーって」

かつての都市が栄えていた頃はね。滅びてからは、何もないよ。

「つまり滅びてからは怠け者なんじゃ」

お黙り。

「あーあ、僕にもファドラーの記憶があればいいのに。同じ頭なのになんでないのかな」

後から生まれたモンが生意気言うんじゃないよ。

「でも昔のこと気になるし」

ほう。

「昔のファドラーは僕に似てたんでしょ?」

そうさ。なにせ、オマエはワタシから生まれたも同然だからねぇ。

「また若い頃のお話、聞かせてよね」

ファドラーが大人になったらな。

「子供扱いしないでよ」

しかしまた、何でそんなことを聞いたんだい?

「だって気になるじゃ――」

その話じゃない。

「あー、誰かを好きにって? 最近、向こうのお花のお姫様とかノティカさん見てたらね、幸せそうでいいなーって思ったんだよね。それだけだよ」

……そうかい。

「誰かを好きになるって、どういう気分なのかな」

ファドラーには当分わからんだろうよ。



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