小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
依頼の帰り道、なんとなく立ち寄った街はなぜかやけに賑わって見えた。
こんな寒い真夜中なのに、何かあったっけか。
赤い煉瓦の道の脇には光りで飾られた植え込みが並んでいる。
眩く瞬くそれを見て、ふと昔に見たバルビートとイルミーゼのイルミネーションを思い出す。
あれは湖での景色だったか。なんて懐かしく思うと同時に、また見に行きたいもんだなと考えた。
こんな寒い真夜中なのに、何かあったっけか。
赤い煉瓦の道の脇には光りで飾られた植え込みが並んでいる。
眩く瞬くそれを見て、ふと昔に見たバルビートとイルミーゼのイルミネーションを思い出す。
あれは湖での景色だったか。なんて懐かしく思うと同時に、また見に行きたいもんだなと考えた。
「あ、スノウリン?」
ぼんやり夜空を見上げながら進んでいた時だ。
すれ違いざまに掛けられた声に振り返ると、道の脇で見慣れたニャルマーがこちらに尾を振っていた。
やっぱりだ。と呟いたのを聞きつつ、こちらも相手が誰かは理解した。
「おお、スピネルじゃないか!」
「奇遇ね。依頼の帰り?」
付けていたバッグを見てそう思ったんだろう。
駆け寄る自分にそんなことを尋ねるスピネルは特に目立つ装備もなく、俺と同じ要件というわけではなさそうだった。
「そうなんだけどさ。お前は?」
「あたしはね、下調べ」
そう話すスピネルは楽しそうに笑うが、こちらは聞いても何のことだかよくわからなかった。
そんな顔をしてたんだろうか、彼女は説明を加える。
「明日ね、ラルフとここまで遊びにくるの。一応、どんな場所か見ておきたいじゃない」
腐れ縁の奴の名が出て、スピネルが笑う理由に検討がついた。ラルフは彼女のツレだ。
そこでふと、そういえばもうクリスマスだったのかと気付く。
街の装飾も、音楽も、なるほど、だからこんなに明るい夜なのか。
ついこの間冬になったかと思ったら、時の流れは早いもんだ。
「ふーん……あいつ、気ぃ効かないんだな」
何かと張り合いがちなラルフへのダメだしのごとく、苦笑いでぼやく。
もっとも、冗談だと解釈してくれるスピネル相手だからこそ言える話だ。
「あなた程じゃないわよ。そういう自分はどうなの?」
「え、いや、俺は別に……」
「あーっ! その言い方! クリスマスに彼女に予定持ちかけてないんでしょ?」
そのセリフにぎくりとした。
あくまで顔には出さないように努力しようも、彼女のこちらを見る目の前には隠しても無駄だと思うに他ない。
まったく、などと呆れるスピネルに何か言い返せないかと思考しても、浮かぶのはしょうもない言い訳ばかりで。
「もう。ラルフのことどうこう言える立場じゃないくせに……」
「っていうか俺のことは放っとけばいいだろ! 」
「ダーメ! ラルフの兄弟だもの、放っておけないじゃない!」
「はっ? 兄弟じゃない! それはアネシアだ!」
「わかってるけど兄弟も同然よ!」
こういう話題にはしつこいのは知っていたけれど、まさかこのタイミングで食いつかれるとは思わなかった。
色んな意味で帰りたい。
「っていうか彼女ほったらかしといて、それでも男?」
「そう言ってるけどラルフだってお前のこと放ったらかしなんじゃないのかよオイ……」
「ラルフは今日は遠出してるの」
どうにか反論したかとほっとしたらこれだ。
「俺だってここのとこずっと依頼の仕事だったんだよ! ったく、寒いのに強いからってさ……」
「……で?」
「……ま、まあ、それで予定持ちかける暇がなかったのもあるけど……」
実際の話をすれば、それ以外の理由もあるのだが……。
言えば話がややこしくなるのはわかりきっているわけだなと考えたら、口に出すのはやめた方がいいとは予想できる。
恐る恐るスピネルの様子をうかがっていたら、にこやかに彼女の顔が変わった。
「……うん、まだ遅くない! 朝一で突撃してきなさい!」
「へっ、朝っぱらから!? 迷惑だろ! ってか眠いだろ!?」
思わずそう言うに他ない。
しかし当然と言いたげに、スピネルが首をかしげる。
「あなた、イグサちゃんかその他大勢に迷惑かけないことかなら、どっちが大切なの?」
「そりゃイグサに決ま――」
咄嗟にそこまで口に出して、自分の言ってることに思わず口をつぐんだ。
スピネルがにやりとしたのを見て反射的に顔を背けた。
「ほら大丈夫! そんなことで照れててどうするの」
「べ、別に照れてなっ……」
「じゃあ、ちゃんと今日は直ぐにお誘いしてくること。わかった?」
的確に隙を突かれ、返す言葉が見つからなかった。
こっちの返事を求めてるのか、スピネルがじっと目をそらさない。
こっちが反らしたところで視線が痛くて、どうしようもない。
そりゃあ、俺だってそうしたいに決まってるけどさ……。
「ねぇスノウリン? さっき気が効かないなんて言ってたのはどこのだれだと思う?」
「ぐっ……」
「大丈夫よ、遅刻ぐらいで機嫌悪くなるような子じゃないんでしょ? それに、結局うじうじしてて放ったらかしにしちゃうほうがお互いに気分が悪くなっちゃうもの」
「……」
「さっ、男ならハッキリ決める!」
「……、……ッあー、わかった! わかったよ! 行けばいいんだろ!」
―――――――――――
もうクリスマスだなーと思って、ちょっと違う方向からスノイグのお話。
スノウリンとスピネルはラルフつながりで仲が良いのです。
スノウリンに一番とやかく言ってくれるのはスピネルだと思う。
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