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小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
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「リーダーはシェリマちゃんのことが好きなの?」

吹いた。内容笑えなさ過ぎて吹いた。
思わず振り返ったら美味そうにカゴにかぶりついたエリアムが「なに?」と言いたげにこっちを見た。
っていうかそんな日常会話みたいなノリで言ったのかよこいつ。なんてやつだよ。鏡はないけど自分の表情が引きつってるのは自覚した。
おやつのカゴを頬張りながらごく自然に言っちまったそんなエリアムの頭の中は恋愛への憧れでいっぱいなのは俺も承知はしているけど、こういう質問だけは何度やられても慣れるわけ無いと断言できる。
エリアムの一言がやけにはっきり聞き取れたのは絶対に最後の単語のせいだった。
そりゃ途中に挙がったシェリマの名前も引っかかるけどそれよりもだ。
好きって。オイ、オイオイ、オイオイオイちょっと待てなんでそんな言葉が続く。
どうしてそうなった。わけがわからない。

「いきなり何だよ」
「だって、よく一緒にいるんだもん。好きなの?」

なんつー理由だよと怒鳴りたいのを理性で抑えつけながら彼女の期待と好奇心に輝く目を睨みつける。
あとその単語やめてくれ。
あーこいつ何かよくねぇこと考えてるよぜってー。すげー楽しそうな顔してる。嫌な予感。

「あー……あいつが勝手に来てまとわりついてるだけだよ」

全力で期待を裏切るべく俺は嘘偽りない事実を述べることを選んだ。
変にまともに答えたら追求されるオチなのは見え見えだしゴメンだ。
面白味のない答えに予想通り、エリアムの眉間に皺が寄るのを見た。

「えー! つまんない!」

そんなことを嘆かれる。
つまらないってなんだよ。てか腹立てたいのこっちだっての。こいつ絶対納得してない。
嘘でもついてお前の暇を潰せってか? はー、乙女心とかホントわっかんねぇ。
ここにライカがいなかったのが救いだと実感して心の底では一息ついている。
あいつがいたら、それこそ尋問だよ。

「おっ、特訓は終わったのかお前ら」
「テク兄! 聞いてよ、リーダーったらすぐ誤魔化しちゃうの!」
「誤魔化してねーよ!」

テクト、と返そうとした矢先にエリアムが何かいいだしたから反論するのが先になる。
やっぱり疑ってやがった。

「ん、何の話だ?」

興味津々としたテクトの声にぎくりとした時には既に遅く、見れば待ってましたと言わんばかりにエリアムの表情が晴れていた。まずい。
これは何か言う何か言うやべえ。

「リーダー、よくシェリマちゃんといるから、す――」
「エリアムッ!!」

咄嗟に出た声は確実に苛ついて聞こえた。実際怒りたいが我慢してるけどそんなに持つほうじゃないのも俺だから。
驚いて言葉を打ち切るエリアムは次に不服そうに俺を見たが負けじと睨み返す。
なんだそのじと目! 怒りたいのはこっちだってんだよっていうかそういう話題ほんとやめろ!

「あ、そうそうシェリマだけどよ」

エリアムと、そんなエリアムを忌々しく見つめた俺とを交互に見比べながら、恐らく聞き取れてなかったんだろうテクトは思い出したように呟いた。
こいつ俺らの今の状況見てんのに仲介もしないのかよ。まあいつもそうだわ。
……そうじゃない今なんつった?

「さっき偶然あったんだけどさー、こんなもんくれたんだよな。いらないからとかで」

二度見した時にはそんな話題と共に紙袋を持ち上げてみせた。いかりまんじゅう、というロゴ入りだった。
そういや何か持ってるなとは思ってたけど、いやいや、くれたってどういうことだよ。なに、あいつこの辺いたのか?
いかりまんじゅうとかどこで手に入れたんだよあの辺に売ってたか?
っていうか何でまたそんなもんあげてんだ。

「これ、俺が好きそうだしさーってよ。まっ、いい子じゃねーか!」
「どこが……」

いい笑顔に対して呆れた。
テクトの考え方は単純すぎるんだよ。ったく。
そりゃあ、何かもらえばそうなるわな。ただし日頃から変に絡まれたとなればこいつみたいな安易な考え方は正すだろう。俺はそっちの側。
はあ。つーか、あいつ、いつの間にテクトと仲良くなってたんだ。

「いいなー」
「ムーにも分けてやるからさ、今度礼言っておけよー?」

羨ましいエリアムに笑いながら話すテクトがそのまま俺にも向いたが、こっちを見るなり珍しく首をかしげた。

「どーしたフィノス?」
「へ? あ、ああ、いや……あいつ、俺以外にもつっかかってんだなって」

知らないうちに変な顔でもしてたのかもしれない。まあいい。
……よく考えれば俺がシェリマに絡まれたきっかけってのが同じ種族だからってわけだったし、うちの連れと知り合ったのはそのせいなんだろうけど、こいつらとはどんくらいまで仲いいかとかは気にしたことなかったな。
まあ、来るとしたら何か俺に無茶なこと言いに来てるんだから相手してんのほとんど俺だろうし、気にする余裕もないけど。
いつの間に仲良くなってんだこいつら。俺が知らないだけか。

「……ふーん、なるほどなぁ」

しばらく黙っていたテクトが、何か珍しそうにまじまじと俺を見た。かと思ってたら。
僅かだが確かにニッとした。

「は?」
「いンや、何も。ほら兄ちゃんとあっち行ってみるかムー。フィノスのやつ、結局何にもないみたいだぜ」

じゃあさっきのニッてなんだよ。何もないこと無いだろ。
聞こうとしたら足早に去るもんだから聞けねえし。おい。

「えっ、……ま、待ってよテク兄!」

ただ、このままだとずっと粘ったんだろうエリアムを引き剥がしてってくれたのには感謝するけど。
いやでもそれよりあれなんだよ。何で笑った? あれ笑ったよな?
もしかして俺なんかおかしいか? え?
両手で何回か頭に触れるけど普通だった。いたって普通だよな?

「……何なんだよ」

わっけわかんねぇ。



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