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小説置き場。更新は凄く気まぐれ。
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「好きです」

絞り出したような声だった。


彼女は微動だにせず、じぃっと、彼の目を見つめていた。
その瞳に先程までの陰りは全く見当たらない。
ただ静かに、彼からの答を待っていた。


無言の時が続いた。
頭上を覆っている枝から解離した木の葉が不恰好に地に落ちる。
秋風にもてあそばれてザアザアとせわしなく身を震わす夕焼け色の木枯しは、もうしばらくすればひどく惨めな姿になるのだろう。
大地を転がる落ち葉がカタカタと乾いた音を立てた。
肌に感じる大気は、ほんの少し前の夏のあの日が嘘のような冷たさである。
彼はその身をもって感じた。もうそんな季節だったのかと。

「悪いけどよ」

彼が沈黙を破った。

「俺ぁ、あんたの期待には応えらんねえ」
「はい」
「あんたが俺に何を想ってんのかは知らねぇが、俺にはあんたを想ってやることは無理だ」
「はい」
「……わかったら早いとこ諦めろ」
「そう、ですか……」

たったそれだけのやりとりだった。
それで終わるはずだった。

「……似てんだよ」
「え?」
「初恋だった奴とあんたが、気味悪いくらい似てるんだよ」

なのにそんなことを語ったのは、何故だろう。
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